第81話 お願い

 領主はそれなりに野心があるようで、王都に返り咲きたいらしい。

 いや、栄転したい?

 会話の節々からそう聞こえる。

 ただ、学期的な何かがある訳ではなく、父親から譲られた領地を可もなく不可もなく、平凡だが実直に治めている男だ。

 少し血の気が多いとの噂もあるが、まだ30代前半と若い領主だからそういうものだろう。


 奥様達とは良好な関係のようで、今晩は期待できると、性癖を言い始めたので咳払いをした。


 ガラスを使った鏡はダンジョン等のドロップ品ならあるのだが、滅多に出回らないらしい。


 大きいのはそもそも外に出すまでに割れるので、細かくなった破片に枠を付ける形らしい。


 先ずは小さな店で、ちょっとしたアクセサリーと共に売る事を考えており、目玉となるのが鏡だと伝えた。


 おそらくスキルレベルを上げると、生産量も増えるはずだ。

 ただ、高価な品なので、敵や盗もうとする輩が出てくる。


 なので領主の後ろ盾が欲しく、事業を起こすのに際し、その土地の実力者にきちんと話を通しておかないとトラブルになるから、領主にお伺いを立てに来たと。

 今後事業を拡大したい旨を説明した。


 俺の説明と、この世界では鏡が希少品というのもあり、領主は頭の中で何やら計算を始めた。


「良かろう。セルカッツ君が商売を始めるのに微力ながら協力しようじゃないか。鏡以外にも何かあるのだろう?君が何をするのか見てみたいのもある。ただ、私の協力を得るのならば、私が求めた時に、優先して君が扱う物を売ってもらおうか。他には何かあるのかね?」


 この領主は多少の打算はあるものの、鏡の価値や俺がこの町で商売をし、鏡を特産にするメリットが大きいと感じたのだろう。

 要求も優先的に売る位で、想定される要求よりも何も要求してこない。


「はい。鏡絡みで1つと、私的な事で1つ。で、鏡の方ですが、実はあの鏡は下町で作っています。連れてきたうちの闘技大会に出ていない方が作成の実務をまとめていますが、孤児達がそれに当たっています。それで彼女達が安全に住まい、鏡を作るのに適した場所を確保したいので、出切れば下級貴族や豪商が住むような屋敷を作業場兼住居としたく、屋敷を紹介又は屋敷を取り扱っている方へ口利きをお願いしたいのです。お金はこの大会で自らに賭けたりもして稼ぎましたからそれをと思います」


「孤児達が作ったのか!」


「勿論作り方や保管方法等、指示は私が出しています。詳しくは言えませんが、職人ではなくそれを可能とするギフト持ちに働いてもらっています。彼女達は個人としてはゴミギフト持ちとなっており、薬草採取や闘技大会の席取り等で日銭を得て何とか生きている者達の可能性を結び付け、奇跡を起こしています」


「にわかには想像がつかないが、この鏡を見れば理解するしかあるまい。丁度分家筋の1人が最近亡くなり、屋敷を相続する者がいない所がある。買い手を探していると聞いたな。少し古く、あちこちがたが来ているし、使用人の数も少ないと聞いているが、そこを1度見てみると良い。貴族街の端になり男爵の屋敷だが、この屋敷の6割程の大きさは有るはずだ。それにまだ家具もそのままだったと思うぞ。もう1つのお願いとは?」


 ゲーム知識で、闘技大会に優勝すると、そのお金で買える屋敷の中に今言っていた屋敷があった気がする。

 色々な意味で【買い】物件のはずだ。


「ありがとうございます!これであの子達も安心して暮らす事が可能でしょう。もう1つのお願いは奴隷商へ口利きをお願いしたいんです」


 ぴくっとなったのが分かる。


「理由次第だな」


「連れのうち先程の槍部門の優勝者のメイヤですが、彼女は父が2年前に買い与えた性奴隷です。彼女を解放したいのです。それと闘技大会で貴族のバカ息子が、私の仲間に奴隷落ちを賭けて勝負しまして、結果奴隷にする事が決まり、契約スキルで縛っているので契約をしたいのです」


「彼女はメイヤと言ったな。彼女は君の何だ?」


「対外的には買い与えられた奴隷ですが、私は彼女を愛しています。本人の希望次第で結婚又は妾にと考えています。ですが、奴隷とは結婚出来ないので、彼女を愛するのは奴隷てなくなってからと考えています」 


「うむ。明日昼頃ここに来ると良い。そう言う事なら構わぬ」


 その後、具体的な計画についてプランと、ウルナさん達の現状について話をしていった。

 

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