第70話 ベスト8決まる

 ベスト8を決める次なる試合はリンドン対エマリスだったが、彼女は棄権した。

 あの異様な奴と戦うのはリスクが大きいと判断したようだ。


 次は斧使いのダイダルスと槍使いのサリバンだ。

 サリバンは摸倣のスキル持ちで、相手の動きをトレースする。

 しかし、獲物が違えば意味を成さない。


 そして試合開始と共にサリバンは駆け出した。

 間合いが違う武器なのも有り、槍の方が有利なはずだった。

 間合いに入ると槍を繰り出したが、サリバンは吹き飛ばされ、観客席に突っ込んで場外負となり終わった。

 斧の1振りにあっさりと吹き飛んだのだが、それはダイダルスが縮地にて一気に距離を詰めた結果だ。

 相手が対応する隙を与えなかった。


 次はディストリ対ハーニャだ。

 準優勝者とは言え、相手の獲物は棍だ。

 ハーニャの敵ではなかった。

 開始早々にディストリが駆け出したが、ハーニャは1度冷静に地面に手を付き身構えたが、ディストリは一気に決めてやろうと駆け出し、間合いに接近すると間髪入れずに棍を振るう。


 さっと躱し、躱しざまに手に握った砂を顔目掛け投げた。

 弓使いと舐めきっていたのもあり、モロに目に入った。


 視界を喪った途端に大男は情けなくハーニャを卑怯だとか罵り、滅茶苦茶に棍を振るう。


 そして・・・ヒューン・・・ペタ。

 矢が額に当たった。

 額には矢が刺さった・・・訳ではなく、鏃の代わりに吸盤がくっついている。

 そしてハーニャの勝利宣言。

 矢が額から生えた状態で膝から崩れ落ち、己の敗北に涙していた。


 次は無手の優勝者のミルギナンと剣術の準優勝者の盲目のヨルミクルだ。


 ヨルミクルの剣を紙一重でミルギナンは躱しつつ、懐に入り込むチャンスを伺っており、攻めるヨルミクルと躱すミルギナンとなっていた。


 1度変則的なケリが腹に当たるも、ヨルミクルはバックステップで威力を減らしていたので、大したダメージは無かった。


 しかし、次の攻撃で剣を落とし、その剣は蹴られて端に。


 無手の剣士など怖くないと、ミルギナンが両手を上げヨルミクルに容赦なく襲いかかるも、なすすべもなく肩を掴まれる。


 誰もがその華奢な肩では簡単に押しつぶされるだろうと思った次の瞬間、ミルギナンは宙を舞った。

 華麗に一本背負いが決まり、油断からか受け身を取れずモロに入り、気絶したようだ。


 やはりこの女無手も行ける。

 強いな。


 そしてメイス使いのナンス対メイヤだ。


 槍姫なだけあり、終始攻め続けたメイヤの圧勝だった。


 続いてネイリス対スメイルだ。

 昨日に続き3度目の相対で、ネイリスは俺からネタ技を教わっていたが、使わなかった。

 スメイルは単純な女の子だ。

 獣人らしい靭やかな身のこなしと、その華奢な体の何処にそんな力がある?というような膂力を持つ。

 実際は斧使いのダイダルスと互角に力を持つ。


 真っ向勝負ではネイリスに勝ち目はない。

 ネイリスは単純な正確ゆえネタ技に引っ掛かったが、本来優勝可能な実力を持っていた。


 恐らくネタ技を使えばまた引っ掛かりネイリスが勝っただろう。

 心の中に奴隷化の事が思い浮かび、正々堂々と戦い、破れて奴隷となるなら良いが、騙し討は良くないと同情したのだ。


 10合程で背後に回られ、首筋にナイフを突きつけられ終わった。





 そして本日最後の試合はアルテイシア対問題の仮面騎士Kだ。


 勝負にならなかった。終始仮面騎士Kがアルテイシアを圧倒していた。

 アルテイシアが使えるだけ身体能力向上を使う時間を与えた。

 アルテイシアが強化をやりきった状態でも相手の動きの方が早く、力も何もかも上だった。


 試合開始早々闘技場の端まで動き、時間を与えたと言わんばかりに腕組みをし、アルテイシアが駆け出すのを待っていた。


 屈服感を与えるつもりなのだろうか?

 やれるだけの事を全てやり、それでも圧倒的な力で上回る自信があるのだろう。

 そこまでして太刀打ちできねば、勝てない・・・そう思うだろう。


「怪我をさせたくない。できれば負けを認めて欲しいのだが・・・」


「無理よ!私負けたら奴隷落ちになるの」


「運がなかったな。殺すつもりはないのだが、力の制御がまだ下手なのだ。それで捕らえるつもりが殺してしまった。負けを認めぬなら殺し兼ねない。恨まないでくれ」


 獲物でありるハルバードの刃先をアルテイシアに突きつける。


「参る!」


 その瞬間、アルテイシアの右腕が方のところで切断され、その細い腕が宙を舞い・・・勝負がついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る