第51話 決勝戦・ナイフ編
ネイリスが闘技場の中央へと向かっていく。
試合で使う模造ナイフは2本の携帯を許されており、ネイリスは1本を手に持ち、もう1本は背中の剣帯に挿している。
その上に羽織ったハーフマントで見えなくしていて、これは隠し武器とする為に持っている。
これまでのネイリスはナイフを1本しか持っていなかったが、それは今回の隠し武器を有効にする為の布石でもある。
対戦相手はネイリスより少し大きいが、メイヤより小さくシーフ向きの少女だ。
冒険者かな?
2本のナイフを持っており、器用にナイフでパフォーマンスを行い観衆を沸かせている。
【私は上手にナイフを扱えるのよ!】
そのようにアピールしているかのようだ。
名前はエマリス。
司会の選手紹介の後に試合が始まると、エマリスは素早い身のこなしでネイリスに迫り、2本のナイフを駆使した連続攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃は速く、見切るのが難しいほどだった。
ネイリスは鋭い視線でエマリスの動きを追い、ぎりぎりのところで攻撃を躱していた。
エマリスの攻撃に徐々に追い詰められていたが、ネイリスは背中の剣帯に挿している隠しナイフの存在に気が付く。
途中から2本目を持っている事を失念していた。
ネイリスを追い込んでいると思ったのか、エマリスの表情は一層凛として、闘志に燃えるものに変わった。
ネイリスは相手の攻撃を受け流しながら巧みに素早く背中に手を伸ばし、剣帯から隠し武器のナイフを引き抜きざまに、相手にとって予測外の攻撃をする事にした。
エマリスの攻撃に苦戦しているが、ネイリスは何とか隙を見計らい、強烈な一撃を放つに機会を伺っていた。
そして、ネイリスが隠し武器による切り札を披露する瞬間が訪れた。
エマリスが突進しながら攻撃してきたが、油断から隙を作ってしまう。
ネイリスはその隙を見逃さず、迅速に隠しナイフを振るってエマリスの攻撃を封じ、彼女に向かって見切りの付いた一撃を放った。
その一撃は正確にエマリスの腕に当たり、片方のナイフを落とさせる事に成功した。
エマリスは驚きと共に1本のナイフを失い、ネイリスはエマリスの突進による勢いを利用し、自ら後ろに倒れ込みながらナイフを落とし、巴投げを決める。
観客席からどよめきと歓声が上がり、ドキドキ、ハラハラとしながら試合の行方を見守る。
ネイリスは息をつき、勝利を掴み取る為に立ち上がり自ら手放したナイフを拾う。
エマリスは器用に回転しながら着地し、ネイリスから反撃を喰らう前に落としたナイフを拾う事に成功した。
エマリスはネイリスの予想外の攻撃に戸惑い、次第に一瞬の隙を突かれて攻撃を躱される事が増えていった。
思わぬ形で攻撃を受ける事になり、彼女は防御の手を緩める事なく少しの時間だが距離を取ろうと、立ち回りを変えたりして何とか息を整えた。
時間が経つにつれ、ネイリスの攻撃が徐々にエマリスに迫るようになった。
ネイリスはエマリスの攻撃の隙を見逃さず、2本のナイフを使って的確に攻撃を捌いており、時折カウンター気味の攻撃を仕掛けている。
エマリスの攻撃に対するネイリスの反撃が徐々に強まっていった。
ネイリスは2本のナイフを駆使して、エマリスの攻撃を受け流して反撃に移る巧妙な戦術を見せていた。
そう、カウンター狙いに切り替えたのだ。
観客達はそのナイフさばきに息を飲み、両者の息詰まる戦いを見守っていた。
エマリスには次第に疲れが見え始め、攻撃の勢いも精度も鈍っていった。
また、ネイリスは執拗にエマリスの右腕を狙って攻撃をしているようだった。
その戦術はエマリスの攻撃スタイルに影響を与えており、徐々に彼女の動きが鈍くなっていった。
そして、ついにネイリスの戦術が効果を発揮する瞬間がやってきた。
エマリスが攻撃を仕掛ける際、ネイリスはナイフを投げて彼女のナイフを弾き飛ばすと、その勢いを利用して素早く彼女に接近した。
驚きと焦りがエマリスの表情に浮かび上がっており、それを見たネイリスはチャンスだと思い、渾身の力を込めた重い1撃を放つ。
その強力な打撃がエマリスの右腕を直撃した。
エマリスのナイフは手から落ち、彼女はひざまずいてしまった。
ネイリスは息を整えながら彼女の前に立ちはだかり、手を差し伸べた。
「いい戦いだったっす。君もすごく強いっすね!」
エマリスはしばらく動けず、何とかゆっくりとネイリスから差し出された手を握ると微笑みながら頷き、立たせて貰った。
「ありがとう。私、負けたけど楽しかったわ」
試合が終了し、観客席からは大きな拍手と歓声が沸き起こる。
勝者に対する祝福は勿論、敗者に対しその見事な戦いを称えるものでもあった。
ネイリスとエマリスは互いに握手を交わして一礼をした後、エマリスは闘技場を去る。
そして司会がネイリスの勝利宣言をし、割れんばかりの拍手が湧き上がった。
その後この試合は【隠し武器の名勝負】とし、大会の名場面として語り継がれることになった。
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