第31話 ネイリスの加入と絡まれ

 そんなこんなでネイリスの方はトドメを刺したからか、幾つかレベルが上がったようだ。

 呼び水は俺がレベルを上げた事だが、シーフ系は最初のレベル上げが無理ゲーと思う位に辛い。

 仲間に恵まれてパワーレベリングが出切れば良いのだが、それは他の仲間も強くない時だと難しいんだ。

 その為に余裕がないと、大器晩成型の面倒を見る余裕が無いのが殆どの冒険者にとっての実情だ。


 なのでネイリスのように仲間に入れてもらえず、やがて才能を腐らせてしまい盗賊に身をやつしたり、場合によっては無理をして死んでしまう事が多く、現実は厳しいと言わざるを得ない。


 心配なのかやたらとアピールしていたのもあり、わざと1匹を見逃したのだが、慌てずに相手の動きをよく見て始末していた。

 これなら問題ない。

 メイヤ達を見ると頷いており、どうやらネイリスは彼女達に気に入られたようだ。


 戦闘が終わってもそわそわしており、それはそれで庇護を求める小動物の如くで、飼ってみたいなと思わなくはない。


 だがここはびしっと行く。


「ネイリス、中々やるじゃないか!君から見て俺達の事はどう思った?」


「す、凄いです!ウル姉から聞いていたけどそれ以上です!何でもします!だから是非仲間にしてください!」


「うん。何でもしますなんて言わなくても良いよ!俺は追放された貴族の元嫡男だ。それ絡みで場合によってはこの町を離れる事になるかもなんだ。君の可能性を俺は見い出したし、その成長を全力でサポートもしたい。彼女達は今は俺の奴隷で、訳あって屋敷から黙って連れ出したから目の敵にされているかもだ。勿論彼女達に手を出していない。君が今の話を聞いても仲間になりたいなら今日から俺達の仲間だ!どうしたい?」


「はい!宜しくお願いします!」


 俺はネイリスと握手をし、メイヤ達も握手と宜しくとね!と歓迎の言葉を掛けていた。


「それと、闘技大会の団体戦に出るなら今日か明日からか、一緒の部屋に泊まって貰うけど良いか?」


「出させて貰えるんですか?」


「ああ。俺達は4人だったからね」


「やったぁ!」


「言っておくけど、男女の関係になるのはお互い同意した時のみだ。無理やりとかは御法度だからね。それ以外はそうだな、報酬とかはパーティーとしての活動資金以外は山分けかな。それと俺の個人的な目標はまずこの3人を奴隷の立場から開放する事、ウルナさん達を経済的に良い状況にする事だ。特にウルナさん達の事はネイリスにも協力してもらうからね!」


「あっ!何かどんなギフトを得たとか聞いていた事が関係あるのですか?」


「ああ。もう少し魔物を狩ってから町に帰り、俺達の事を含めウルナさん達にも俺が考えたプランを話すよ。ウルナさん達はいずれ体を売らないとかなとか思っているようだけど俺がそんな事をせずに済むようにするさ!俺を信じろ!」


 自分でもクサイ事を言っている自覚はある。

 日本にいた頃こんな事が言えたなら、素人童貞なんて事にはならなかっただろう。


 この辺りはダイランド侯爵が雇った家庭教師から仕込まれており、上の立場になる者としてのカリスマ性を高める話術等もしっかりと学んでいた。


 この後もう少し奥に入り、乳牛程の大きさで猪とカバを足して2で割った感じのボッガロンという魔物を倒した。

 少し苦戦したけど、怪我をする事もなく倒しきった。


 肉が中々美味しい魔物で、重さは約500キロもあったけど、身体能力向上系の魔法のお陰で半ば引きずる形にはなったが、問題なく薬草採取の場所に戻る。


 しかし・・・・トラブル発生だ。

 数人の男達に囲まれて腕を掴まれているウルナさんの仲間の女性が放してと叫んでいた。


 俺は怒りからボッガロンを放り出し駆けて行く。

 勿論外の4人も続く。


 魔物に襲われているなら分かるけど、まさかゴロツキに・・・

 外の冒険者もいたから油断したな。


「お前達!彼女達に何をしている!」


 俺は叫んだ。


「ああん?ガキはすっこんでろ!この女は俺が口説いているんだ!ケケケ!邪魔すんじゃねえ!」


「俺の仲間が嫌がっているだろう!放し給え!」


「何が放し給えだ!放してやっても良いが、後のねぇちゃん達が俺達の相手をしてくれるのか?ああん?」


 20代半ばの冒険者崩れで、6人いた。

 近くの冒険者達は関わりたくないのかその場を遠巻きに覗き見るだけだ。


 メイヤが槍を構え、ハーニャは矢を番えると引き絞った。

 またタニスは頭上にアイスランスを6つ生成して威嚇する。


「お放しなさい。貴方達に勝ち目は有りません!死にたくなければここから去りなさい!」


 タニスはアイスランスを放ち、男共の直ぐ側の地面に突き刺し、次のアイスランスを生成した。


「なっ!くそっ!魔法使いか!やぶぇ!ずらかるぞ!」


 リーダーらしき奴が即時に踵を返して真っ先に逃げて行き、外の者も続いた。


 子供達は逃げていたが、すぐに戻ってきた。

 ただ、絡まれていた女性達は泣いており、腕を掴まれていた女性をそっと抱きしめてその腕を治療した。


「あっ、セルカッツ様!ありがとうございます!」


「大丈夫だったかい?何があったんだい?」


「薬草採取をしている女性に強引に声を掛ける冒険者がいると聞いていたのですが、偶々私達に声を掛け、強引に連れ出そうとしていたんです

 !怖かったです!本当にありがとうございます!でも、助けられてばかりで申し訳なく思うんです」


「もう少し早く来ていれば怖い思いをさせずに済みましたね。しかし、無事でなによりです。腕は痛みませんか?」


「お陰様で大丈夫ですわ」


「よし、それじゃあ子供達を集め、全員揃ったら念の為引き上げましょう!珍しい大物を仕留めたんで、皆さんが本来稼げるお金も出せるし、ちょっとしたお小遣いも渡せられそうですから」


 皆の顔が明るくなる!

 高級肉となるからそこそこの値段になるんだ。

 強さは大した事はないんだけど、滅多に人の近くに出てこないからあまり市場に出回らないからなんだ。


 子供達が戻ったので、獲物を積み込み俺達は町へと戻る。


 皆へのお小遣いは、ネイリスが俺達のパーティーへ正式に加入する祝儀として、祝の席で配る事にしたんだ。


 服を買ってあげる事を考えたんだけど、好みが分からないし遠慮されるからなんだ。

 ただ、買った服を着た姿を見たいなと呟いておくから、お金を使わずに皆為に使うお金に回すような事をしないようにと釘を差す事にしているんだ。

 自分の事よりも幼い子供達の為にと思う優しい女性ばかりだから、こうでもしないと買わないだろうから。

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