第30話 ネイリスの試験
3人に周りの警戒をお願いし、俺はネイリスに声を掛ける。
「お疲れ様!中々やるじゃないか!」
「あ、ありがとうございます!お借りしたナイフの斬れ味が凄かったんです!それにいつもより体が軽かったんです!ボクは普段だともう少し手こずるんです!」
「シーフでこれだけやれたら問題ないぞ!そのうち他の戦闘スキルが生えるからさ!さあ、次は俺の番だな!ネイリス、索敵をお願いしても良いかい?」
「あっはい!索敵には自信があるんです!はい!頑張ります!」
俺にも索敵スキルが有る。
でもシーフの能力の方が上なんだ。
今のゴブリンもほんの数秒差でネイリスが察知している。
レベルを上げた俺の気配察知とほぼ同じだ。
もしも同じレベルだったらネイリスの方が先に気が付いただろう。
3人からの信頼を得て欲しい。
俺が何故シーフを入れたいか理解できないだろうが、信頼できる人だと分かると仲間として受け入れるだろうからだ。
俺がひとこと言えばパーティーメンバーとして受け入れるが、それはまた違う。
ちゃんと人となりを見極めてから決めて欲しい。
それはともかく、今は薬草採取者の安全を確保する為に林の中に入っていく。
15分程進むとネイリスが急に歩みを止め右手を上げた。
3人も止まり、俺はネイリスの所に行く。
なるほど、複数の気配がするな。
「魔物だな。どう思う?」
「恐らくゴブリンの集落が有ると思うんです。皆さんの実力が分からないので何とも言えないですが、気配からは15〜20匹いると思います」
「問題ないな。俺が半分は行けるよ。今度はネイリスは見ていてくれ。ただ、こっちに来たら単体なら相手にして欲しいな」
「ホ、ボクも戦いたいです!」
「じゃあ弓使いのハーニャの近くにいて、彼女に近付く奴を倒して欲しい。来なくてもハーニャの護衛にはなるからいてもらうだけでもかなり違う。回すつもりはないけど、行ったらよろしくな!」
「ボク頑張ります!」
「無理はしないようにね!自分の命を1番大事にね」
次に3人娘を手招きし、見えているのはゴブリンの集落と思われる事、それへの対処について少し話した。
タニスとハーニャが魔法と矢で先制攻撃し、その後に俺とメイヤが突っ込み、タニスとハーニャは俺達の援護、ネイリスがハーニャ達の守りとして配置する事にした。
こちらがネイリスをパーティーメンバーにするのか決めるのと同じで、ネイリスも俺達がパーティーを組むに値するか見極めて貰うのが目的の戦闘だ。
それにきちんと戦い振りを見ないと、一緒に戦う時にどうしていけば良いかよく分からないだろうから、お互いの実力を知って貰う目的がある。
集落と言っても粗末な建物があるだけだ。
林の中にあり、森林火災を引き起こしかねないからと火魔法は断念した。
西の森と違い、燃やすのは良くないと聞いたからだ。
今の俺達の中で唯一魔法による遠隔攻撃の手段を持つのはタニスだが、小型のアイスランスを数個生成すると、ハーニャの矢と共に外にいるゴブリン達に向かって放たれた。
それらはゴブリンに当たり、即死しなかった奴が断末魔の叫びを上げる。
粗末な建物の中からゴブリン共が出てきたので、俺とメイヤは集落の中へと駆けて行き、右に左にと斬り伏せていく。
メイヤは正確にゴブリンの急所へ槍を突き刺し、次のターゲットへ赴く。
1匹だけわざとハーニャ達の方へ行くのを止めず、俺はメイヤと共に斬り込んでいく。
今のレベルだとゴブリン如きには遅れは取らず、一方的に倒して行く。
そうして5分もしないうちにゴブリンの集落の制圧が終わった。
そしてネイリスに俺が気絶とか手脚を切り落とすだけにし、無力化したゴブリンにトドメを刺すよう指示をした。
勿論タニスとハーニャにもさせ、このような状態でもトドメを刺せるか確認した体でだ。
何故こうしたか?
それはパワーレベリングの為だ。
ゲームだとトドメを刺した、つまりラストアタック者が1番多くの経験値を取得するからだ。
勿論パーティー員には等しく経験値が入るが、ラストアタック者は倍入ったからだ。
例えこれから毎日ネイリスのレベルを俺の能力で上げても、闘技大会で出てくる者のレベルの方が高い可能性がある。
そうなるとそれとは別に魔物からの経験値がモノを言う。
俺やメイヤ達もゴブリンから多少の経験値が入るだろうが、レベルが上がれば1体から入って来る経験値も減る。
まあ、あくまでもゲームと同じならだけど、理屈を考えてもそうなる。
誰かステータスが見える鑑定持ちがいないかな?
ウルナさんの仲間にいたりして。
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