第28話 ウルナさんは若かった

 俺達が泊まる宿では、1部屋が割り当てられた。

 基本的に団体戦に申し込んだ者達は5人が泊まる事の出来る6人部屋を貸し与えられるからだ。

 この宿は闘技場と契約しており、頻繁に闘技が開催されるその出場者を泊まらせる宿になる。


 なので宿の裏に小さいが訓練場がある。

 大小あり、小さい方は予約すれば時間貸しで使えるのも有り難い。

 他のチームに見られたくない連携など、秘密の練習や最終調整をする。


 ただ、この日はお風呂も短い時間だが貸し切りを申し込み、4人で入っている。


 まだ性的に抱いていないが、既に俺の女然として肌を晒すのに躊躇がなくなっている。

 確かに元々屋敷では裸のメイヤに体を洗われていた。

 タニスはキルカッツの理性が飛んで犯してしまうのと、ハーニャは流石に息子と同い年のメイドに洗われたくないと、成人するまでは免除されていた。


 だからお風呂では貴族のそれとして見えてはいけない所に目を向けない。

 これは貴族の嗜みだ。

 例え毎晩ベッドで肌を重ねる相手でも自制する。


 いわゆる裸の付き合いをする時、国王や上位貴族同士で密談なんてのは、武器を隠し持てないようにメイドを含め裸で風呂に入り話をする。


 そんな真面目な話の中男性のシンボルが反応してしまうのは、相手に対しての侮辱になるから、自制を学ぶ。


 話は逸れるけど、ゲームだといきなりメイヤを犯して自害に追い込んだ罰として、1年の間禁欲生活を申し渡され、その当たりの自制を身に付けるようにさせられていたな。


 だから俺は白だ。

 彼女達はメイドは主人の体を洗うものです!と未だに奴隷のメイド気質が抜けない。

 今は彼女達の精神の安寧のために主人として洗われている。

 これだと恋愛感情は抱けない。

 勿論手を出すつもりはないが。


 この日は魔力切れの影響で早々に寝た。

 メイヤとハーニャに挟まれていたが、性的な事は別として人肌は心地良い。


 ただ、翌朝トイレに駆け込む事態に・・・

 コホン。

 ひと晩ぐっすり寝たが、彼女達のお陰か完全復活だ。


 朝早い時間にギルドに行きウルナさん達と合流した。


 この町の案内をお願いし、午前は昨日とは別の所で薬草採取をするとの事だったので、その周辺の魔物を駆除する形を取る。


 彼女達は人力のリヤカーを持ってきていた。

 どうせ何かの討伐依頼をしなきゃだからと、俺達が序に護衛をするからと伝えていたら8歳から13歳位までの未成年を含め全員で来たという。


 何でも身寄りのない子供達だけで身を寄せて生きており、そんな孤児院的な所にいるそうだ。


 中には巣立っていった者もいるが、ウルナさんだけは離れずに残って皆をまとめているのだとか。


 闘技大会中は自由席の席取りや、有料席の販売開始前の並びを代行したりと、小さい子でも出来る事をして生きてきたそうだ。

 小説やアニメとかであるあるの内容だ。


 リヤカーを俺が牽く。

 流石に女性に牽かせたくはないからで、子供達には乗っていても良いぞと言うと喜んでいたな。


 体力もレベルの補正があり、1時間ちょいの道なら余裕だ。

 もしも魔物を倒したら載せられるだけ載せる為に持ってきてくれたんだ。


 一応2人で牽けるのでウルナさんが僕と一緒に牽く。

 とは言ってもウルナさんは手を添える位だ。

 意外と掴まるところがあると歩くより楽らしい。


 何故そうしているかと言うと、色々話を聞きたかったからだ。

 女性陣は皆小さいが銀細工を身に着けている。


「昨日も気になったんですが、銀細工ですよね?作業服なのにウルナさんの魅力が色褪せるどころかその美しさが際立っているので興味を持ちました」


「お上手なのですね。いっそ口説いてくれたら良いのに。私まだ17歳なんですよ。私は金属の加工が得意なんです。そう言うギフトを得ていて、こういった細工を作り、あの子達に渡しているんです。お金に余裕がないけど、年頃の女の子にせめて小さなアクセサリー位はと思い作っているんです」


「商売はしないのですか?」


「センスの問題かしら?私が作っても大したお金にならず、薬草採取をしている方が稼ぎが良いものですから、天気が悪い日に少しずつしかつくれなくて」


「そんな売れないデザインではないような気がしますが、因みに材料はどうしているんですか?」


「ギフトで金属を錬成出来る子がいるから、1日につき小指の先位の銀や金を用意してもらっているの。その子なんか金属を布のように薄くするギフトだし、あの子は物と物を接着する事しか出来ないギフトしかなく、こうやって薬草採取に行くしか無いんです。銀細工も細々としか作れなくて。売れないのは露店で売るにしても数が無いと見向きもされないからなんです。私が店に立つと変な誘いしか来ないので・・・」


「ちょっと、皆のギフトを詳しく聞かせて貰えませんか?マナー違反だとは分かるんですが、俺の知識を使えば化けるかもです!皆の生活を良くする為のアドバイスが出来ると思うんです!」


「はい。私達はセルカッツ様がいなければ死んでいたか、ゴブリンかオークの苗床にされていたでしょう。私の事を抱けるのに抱かないのに、何故そんなに親身になって頂けるのか分かりませんが、セルカッツ様になら全てをお話します」


 そこから目的地までウルナさんの仲間の能力について話を聞いていた。


 そうかあ、ウルナさん17歳でしたか・・・

 あっ!聞いたんじゃないよ!

 俺がかなりの歳上だと思っていると感じ、話してくれたんだろう。

 俺達の歳を知っているのにこちらの歳を伝えないのは駄目!と言った感じかな?

 しっかりとした女性だったから大学を卒業した頃の歳かと思っていたんだよな。

 心は成熟しているのか?

 服装が生きるのに精一杯のみすぼらしいものだから、苦労からそう見えたのかも。


 確かに髪を梳き、化粧とはいかないだろうが、真新しい服を着れば17歳に見えるな。

 それとも14歳からすれば大人の女性だから、そう思えたのか・・・


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