勇者ゲーム

筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36

(一)



 「勇者ゲーム」。


 それは大正時代に私立の女学校として創立され、現在は共学の中高一貫校である八百生学園高校における新入生オリエンテーションを兼ねた親睦行事のことである。


 その内容は「高等部の一年生になった生徒は全員、一学期の中間テストまでに好きな人に告白する」というゲームである。


 イベントは四月と五月の二ヶ月間開催される。まず、四月中は準備期間だ。この間で勇者ゲームを実行に移すあらゆる準備をしなくてはならない。そして五月に入ると活動スタートになる。ほとんどの生徒はゴールデンウィーク開けから本格的に活動することになり、五月末までの約一ヶ月間に、最低でも一人に告白をしなくてはならない。


 中等部からの内部進学者が半数以上を占めるこの学校に、高校受験して新たに入学した一ノ宮和佐も、思春期真っ只中の生徒に勇気と、羞恥心への抵抗力を試すこの行事への参加を余儀なくされることになったのであった。


 そしていま、そのゲームの幕が開けようとしていた。



(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る