かつて魔王を倒し世界を救い伝説となった最強無敵の伝説の勇者ちゃんねる2
嬉野K
かつて魔王を倒し世界を救い伝説となった最強無敵の伝説の勇者ちゃんねる2
『やはり』と『まさか』
第1話 勇者は動画を投稿した!
『勇者は動画を投稿した!』
「しかし、なにも起こりませんでした」
勇者の目の前でノートパソコンを操作する少女は冷たく言い放った。
「いやいや……」勇者は自身のノートパソコンの画面を少女に見せながら、「ほら……3回視聴されてるから……」
「勇者の知名度があって、逆によく3回視聴とかいう記録が出せますね」
「ゆ、勇者の知名度って言っても10年くらい前のものだし……」
「たった10年で勇者への感謝を忘れる人間……そちらも腹立たしいですが……今は他のことに腹を立てています」
「なに?」
少女は勇者のノートパソコンの画面を指さして、
「なんですか、その動画は」
「……俺の投稿動画だけど……」
「真剣にやっていることは認めます。ですがあえて言いましょう。あなたの動画はクソだ。しかも……なんですか『かつて魔王を倒し世界を救い伝説となった最強無敵の伝説の勇者ちゃんねる2』って。チャンネル名ですか? 長い上に、センスをまったく感じない」
「ちゃ……チャンネル名はカッコいいでしょ……」動画がクソなのは認めるが。「一生懸命考えたんだけど……」
「それは申し訳ない。ですが、クソです」シンプルな罵倒。「ちゃんねる、とひらがなにしてかわいらしくしようとした努力は認めましょう。しかし問題は……その前の文章ですよ」
はて、どこに問題があるのだろう。
「……勇者の経歴を簡潔にまとめたつもりなんだけど……」
「……たしかに嘘は書かれていませんが……」魔王を倒して世界を救って伝説となったのは本当だ。最強なのも本当だろう。「そもそも……ちゃんねる2ってなんですか? なんで2なんですか?」
「一回チャンネル消されちゃって……」
「BANされたんですね……いったいなにをやらかして……」
「さぁ……? 俺にもよくわからなくて……」
「あなたは規約読まないタイプでしょうからね……おそらく、なにかしらのガイドラインに触れたのでしょう」
少女はため息を付いてから、しみじみと続ける。
「本当にあなたは……戦うことしか知らないんですね」それから少女は勇者を見て、「あなた……今は何歳ですか?」
「今? 23だけど」
「……魔王を倒したときは13歳ですか……」少女はまたため息をつく。「強大な力を持つ子供に戦いだけ教えて……魔王を倒したら即用済みですか……やはり人間なんて、腐った生き物ですね」
勇者だって人間という種族に思うところがないわけではない。自分も同じ種族だが、恨みがないわけではない。感謝も恨みも、どちらもある。
「まぁ……いいでしょう。今は腐った人間が地上を牛耳っている。その時代を嘆いていてもしょうがない。問題なのは、その状況でどう生きるかです」
「そうだね」
「そしてあなたは……動画投稿で生きる道を選んだ……その道、私がサポートして差し上げましょう」
突然、少女はそんな事を言いだした。
サポートはありがたいのだが……とりあえず、この子は誰?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。