合同訓練の前に――

【昼・竹宮高校・演習場】


 Side 木里 翔太郎


 合同訓練の前に実機によるトレーニングを行っていた。

 相手は相川 タツヤ。

 使用する機体は共に零戦二型。

 武器はペイント弾である。

 

 演習場を所狭しと駆け回り、ロボットアニメのような空中戦を披露する。

 相手は相川 タツヤだ。

 生半可な守りは逆に命取りになる。


 相手もそう思っているのか攻め込んで、演習用のブレードを振りかぶってくる。


 ビーム兵器やレールガンが登場した現在でも近接戦闘武器は重要だ。

 特にヴァイスハイト帝国のエース達はほぼ近接戦闘戦のプロである。

 そうしたエース達を相手していたせいか自然と俺も達也も白兵戦が身についてしまった。


 こうした斬り合いもロボットアニメの世界だけだと思った。

 だが現実ではとても有効的だ。

 それはマシ―ネン相手にも同じである。

 

(下手に距離を離すと相手の射撃の餌食になる。とにかく攻め続けるしかない)


 戦いは斬り合いと言う名の我慢比べの様相を呈していた。

 下手に距離を放せばライフルによる射撃が来るからだ。

 

 そうして暫く斬り合いを続け――


『しまった!』


『そこっ!』


 タツヤに蹴りを入れられ、距離を離す。

 そこにライフルによる射撃が飛んでくる――


『くっ!!』


 寸前に俺はライフルを投げつけた。

 相手が怯んだこの僅かな隙。

 これを逃せば勝機は無くなる。


 俺はナイフを取り出し、相手の胴体に飛び込んだ――



【昼・竹宮高校・格納庫】


 模擬戦は俺の勝利。

 タツヤとの勝率は五分五分ぐらいだが今日はどうにか勝てた。

 

「相変わらず強いですね」


 と、タツヤに言われたので「互いにな」と言っておいた。


「しかし急に訓練だなんて――やはり合同訓練に向けてですか?」


「まあな。経緯はともあれ、エースの看板背負ってるんだ。無様な姿を見せてガッカリさせたくないしな」


「確かにそうですが、あまり気を張り詰めすぎるのもよくないかと思います」


「それもそうか」


 相川 タツヤの言いたい事は分かる。

 確かに不安であるが気にしすぎるのも逆によくない。

 それに、こうして模擬戦して汗を流すのもいいが出迎える準備をあれこれと考えるのも仕事だろうとも思った。



【夜・竹宮高校・生徒会室】


 主だったメンバーを集めて桜庭学園の出迎えの準備をアレコレと考える。

 合同での模擬戦、トレーニングは当然として行うがそれだけでは味気ない。

 それに自分達は学生なのだ。

 だから学生らしく何か催し物が出来ないかと考えるが時間もない。


 あーでもない、こーでもないと時間が過ぎていく中で答えを出したのは手毬だった。


「別に学生らしくに拘る必要はないでしょう? それに深く考える必要もないと思うの。合同訓練や模擬戦して、後は皆で楽しく食って騒いで――それから考えればいいのよ」


 サエの意見は場当たり的ではあるが正論でもあると思った。

 その意見が採用されて会議はお開き。

 


【夜・学生寮・手毬の部屋】 


 俺は手毬の部屋に来ていた。

 サエの部屋は可愛らしいニチアサ系マジカル戦士のグッズが多い。

 サエはクールな女の子を気取っているがこう言うのに憧れる女の子なのだ。 


「正直言うと私も合同訓練ちょっと不安な事があるのよ」


「俺もだ。だけどサエが言ったようにまあ深く考えずに楽しめばいいと思うんじゃないのか?」


「うん――そうよね。情けないわ――言い出しっぺの私がこんなになるなんてね……どんな人達かな、桜庭学園の人達」


「まあ、それは会ってみてのお楽しみだな」


「うん」


 そうして俺達は眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る