ゆりかごとひつぎ
冬井 桃花
序
貴方の様に生きられたなら。或いは、貴方がここで生きていたなら。
私と貴方とでは、生きている環境も人生の目的も大きく異なっているけれど、私と貴方との違いとは、いったいどれ程のものなのでしょうか。
人間の自意識が環境と経験によって形作られるものであるのならば、たとえ私と貴方の立ち位置が逆だったとしても、前提と過程が同じなら結末もまた同じになるのではないでしょうか。私は貴方と同じ選択をして、貴方は私と同じ絶望を知って。蝶の羽ばたき程度では抗いようのない現実を前にして、変えられる未来がどれほどあるのでしょう。だから結局のところ、私と貴方にはきっと大きな違いなんてものはないのかもしれませんね。
だけど私が貴方であったなら、貴方が私であったなら、こんな結末にはならなかったのではないかと、どうしてもそう思ってしまうのです。
正直に言うと、私は貴方が羨ましい。貴方の様に生きられたなら、こんな私でももっと自由に自分らしくあれる気がして、そんな自分を夢に見てしまって。
だからこそ。私と貴方とでは全く違う人間だということの証明を、少なくとも私だけが私であるという希望を胸に抱いて、私は眠りにつきたいのです。たとえこんな結末だったとしても、私だからこそ迎えた結末であると信じたいから。たとえ貴方の夢見たとしても、次に目覚めた私がこの私でしかなれなかった私であるということ切に願って。
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