第110話 おじさん、カーバンクルランドで働く。
「……以上が、
「なるほど、なるほど? 要はあたしゃたちがケルベロスを弱らしたところに、
俺は、
「本来なら、シェールストーン製の檻に入れて、最低限の自由を与えるべきかもしれないが、
「ふーん。しかし
「さあな……だが、あいつは昔から熱心に陰陽師の『失われた秘術』を研究していたからな。どっかで古文書でも見つけたんだろう」
「ま、
「この作戦における肝心要のキーマンが、やけに実戦経験が浅いけれど、こんなメンバーで大丈夫かい?」
「大丈夫だ。問題ない。どちらも、キモが座っているからな。若い頃の
「ん。了解。お師匠がそういうのなら、あたしゃも信じるしか無いねぇ」
自分が褒められたことが、まんざらでもないのだろう。
ピッ! ピッ! ピッ! ピッ!
うきゃ! うきゃ! うきゃ! うきゃ!
背中のほうから、ホイッスルを鳴らす音と、何かの鳴き声が聞こえる。
俺は音の方へと振り向いた。
ピッ! ピッ! ピッ! ピッ!
うきゃ! うきゃ! うきゃ! うきゃ!
栗色の髪を左右でお団子にして、白地にカラフルな水玉模様のシニョンネットを被せている少女。
そして少女の背中には、フワフワでモコモコの毛をしたサルがしがみついている。カーバンクルランドで飼育されている、八卦の幻獣の一匹、想像の象徴、
ピッ! ピッ! ピッ! ピッ!
うきゃ! うきゃ! うきゃ! うきゃ!
少女のリズミカルなホイッスルにあわせて、「こっちゃこい」と
少女と
ピッ! ピッ! ピッ! ピッ! ピーーーーーーピッ!!
うきゃ! うきゃ! うきゃ! うきゃひー!!
少女がホイッスルを鳴らすのをやめると、色とりどりのクマたちはピタリと止まって動かなくなる。少女は口からホイッスルを外すと、おっとりとしつつも、ちょっと怒りの入った関西弁のトーンでさけぶ。
「カンコさんに、
「ごめんごめん、コヨミちゃん。すぐにダンジョンコーナーに行くから! クマメン、ついてくるんだ!」
急かされた
カーバンクルランドの常駐従業員は、
コヨミと呼ばれた少女は、持ち場へとちっていく、
「そこの3人も、ボーッとしとらんで、はようユニフォームに着替えてください! 今日は休日やし、お客さんもぎょーさんくる! ネコの手もかりたいくらいなんや!」
え? 俺たちも働かないとダメなのか!?
俺がとまどっていると、
「わー! 面白そう!! カーバンクルランドのユニフォーム、めっちゃカワイイから着てみたかったんだよねぇ」
ロカはノリノリだ。
「こっちよ、ロカチャン。ユニフォームは宿舎にあるから!」
カーバンクルランドにちょくちょく足を運んでいるヒサメも、当然とばかりにロカと一緒に宿舎へと向かっていく。
「おじさんも、早く早く!!」
俺は、ロカにうながされて、渋渋、赤のオーバーオールを着込んで麦わら帽子をかぶると、ロカやヒサメの見様見真似で、慣れない接客作業をはじめた。
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