第77話 おじさん、探索庁でVIP待遇を受ける。
*ここから再びおじさん視点です。
――――――「次は、永田町~、永田町~」
『ラブロカチャンネル』と、その視聴者がつくった有志の掲示板に、必死になってコメントを書き込んでいると、あっという間に目的地に着いた。
俺は大急ぎで電車を降りると『探索庁』へ向かう。
ダンジョンの管理、並びに探索者のライセンスや、探索者が換金したシェールストーンの相場設定など、ダンジョンにまつわるあらゆる権利、ならびに安全を一手に取り仕切る国家機関だ。
はじめは、防衛庁のいち部署として設立されたが、シェールストーンのエネルギーとしての価値が確立されたころに独立をした。
俺は、国会議事堂のほど近くにある、なんとも近未来的な探索庁のビルに入ると、まっすぐ、受付へと向かっていく。
「ライセンス申請を行いたいんですけど」
「承知しました。ライセンスのカラーは何色ですか?」
「ブラックです」
「え!? しょ、少々お待ちください」
受付の女性は慌てで返事をすると、パソコンのマウスを超高速で動かして「ヒェェ」とつぶやいたあと、おずおずと俺に話しかける。
「大変失礼しました!
32階で係の者がお待ちしておりますので、そちらに見えるエレベーターで向かってください」
「わかりました」
「あ、あと、局長が
「はい。局長には話を聞いています」
「よ、よろしくお願いします!!」
・
・
・
俺は、ネイビーライセンスの手続きを終えて、エレベーターで64階に向かっていた。全面ガラス張りのエレベーターは、音も無く静かに昇っていき、眼下に広がる満開の桜並木がぐんぐんと小さくなっていく。
しかし、なんなんだろう?
さっきの受付といい、32階で待ち受けていた担当者といい、終始緊張して、俺なんかのことをまるでVIPかなにかのように丁重にあつかってくる。調子が狂うなんてもんじゃない。
ポーン
64階に到着したエレベーターが開くのを待っていると、そこにも直角90℃でお辞儀をしている濃紺のスーツ姿の青年がいた。
「
私、
頭をあげた
濃紺のスーツの襟についたバッジと同じ、ダンジョン書士のマークだ。
攻略済みダンジョンの認定、遊戯施設フロアの受理、ダンジョンで使用するシェールストーン製武器の認可など、ダンジョンにまつわるあらゆる行政を取り仕切る国家資格者の証。
エリートの証と言い換えてもいいだろう。
「局長室にご案内いたします」
俺は、窓際のガラスに写った自分の姿を見る。
ピシッと三つ揃えのスーツを身にまとい、髪の毛に整髪料をてかてかになでつけた青年にエスコートされている、量販店で購入した着倒しまくりのヨレヨレな服を着ているさえないおじさんが後ろをついていく姿が写っている。
なんともシュールな光景だ。
ひょっとして俺、着てくる服を間違えた……のか??
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