第66話 美少女、ダンジョンのあるじに挑む。
おじさんは、ケルベロスの左頭とガップリよつに組み合いながら、アタシに向かって叫ぶ。
「最大火力でぶっぱなせ! いいな!!」
「わかった! やってみるよ!!」
おじさんの声に後押しされて、アタシは
アタシは、素早くケルベロスの背後に回る。
その距離30メートル。
ポーチ型のシェールストーン粉砕機には、黄、緑、緑、緑の順番でシェールストーンをセットした。これで準備オッケーだ。
ふうううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
肺の中が空っぽになる限界の限界まで息をはくと、シェールストーン粉砕機のボタンを押す。そして、
すうううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
ポーチの横についたスイッチを押しながら、サーベルの柄の部分にそっと口を当てて、限界まで黄色いマナを吸い込むと、ふたたびポーチのボタンを押しながら、後ろ手に構えたサーベルを、思い切り前に突き出した。
「ソニックドラフト!」
アタシは、真横に発生した緑色の竜巻の中に飛び込んだ。
一気に加速をして、きりもみ回転をしながらケルベロスに突っ込んでいく。
でも、まだだ。まだ回転が不足してる!
「スピンドラフト!!」
アタシはきりもみ回転をしながらサーベルを円月状に振り下ろし、小さく渦を巻く円の中に飛び込むと、回転はさらに加速していく。
身体にかかる強烈なGと、はげしいきりもみ回転で三半規管がシェイクされて、意識が飛んでしまいそうだ。
でも、まだ準備がおわっていない!
アタシはみたびポーチのボタンを押すと、そのままサーベルを下から上になでる。
「ウインドブレード!!!」
ヴゥオオオオン!
サーベルが限りなく白に近い緑色に輝く。
緑のマナを超高密度に圧縮して作り出した片刃の刀剣。射程も短いし電撃のような付与属性もない。でも切れ味だけは超最高!
緑のマナで造り出せる最大威力の形状変化だ。
アタシは緑色に輝くサーベルを両手でつかむと、ケルベロスの首めがけて高速回転をしながら突進をする。
「ごめんね! あなたに恨みはないんだけれど……!!」
アタシがサーベルでケルベロスの首を斬り裂こうとした瞬間。
「やめてぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
どこからか、女の人の泣き叫ぶような悲鳴が聞こえてくる。
「えっ!!」
アタシは反射的に身体をそらせて、すんでのところでケルベロスへの攻撃を回避すると、体制を大きく崩して回転をしながら地面に激突した。
「きゃあ! ほぎゃ!! ぐふっ!!! ぶべら!!!!」
地面をなんどもなんども転がると、最後に顔面を強打してようやく回転を止めることができた。
「アタタタタ……えぇ!?」
顔面を押さえながら、回転酔いでふらつく身体をどうにか起こして顔をあげる。すると、アタシの視線の先におじさんのガラケーに写っていた女の人が立っていた。
ササメさんだ。
ササメさんの姿は、おじさんのガラケーの写真と寸分たがわず若い姿を保ったままだ……それどころか。
メガネを外してメイクをしていないぶん、写真よりも若く見えるくらいだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます