第8話 おじさん、無意識にバズる。
俺とロカは、受付にライセンスを見せると、魔法陣で第7層へと潜る。
俺はロカに質問をする。
「標的はどのモンスターにするんだ?」
「もちろん、恐竜型よ! あいつを撃破できれば『レッドライセンス』をゲットして第10層まで潜ることができるもの」
「自力で戦ったことは?」
「あるけど……全く歯が立たなかった」
ロカは気まずそうな顔をする。
「わかった。とりあえず恐竜型を弱体化しておくから、ロカは撮影準備をはじめておいてくれ」
「りょーかい。ほんとはADのおじさんに撮影準備をしてもらいたいけど、おじさんメカ音痴だからなぁ」
「悪かったな」
俺は気まずい顔をした。
探索者の基礎体力は、モンスターを倒すことで上昇する。『シェールストーン』に具現化できなかった『マナ』が探索者の体内に入り込むからだ。
つまり、モンスターを倒せば倒すほど探索者は強くなることができる。
その点、ロカは明らかな経験不足だった。
仮に、恐竜型を倒して『レッドライセンス』を入手したとしても、この先、一層苦労することになるだろう。
しかたがない……少々骨を折ることにするか。
「ぎゃおおう!」
俺は、猛スピードで襲い掛かる恐竜型に、足払いをしかける。
「ごぎゃ!」
恐竜型はあっけなく仰向けにすっころんだ。
「悪いな、お前に恨みはないんだがな」
俺は、すっころんだ恐竜型の胸の上に、思いっきり体重をのせてのっかる。足の裏に、肋骨が折れる鈍い感覚が伝わる。
俺は、恐竜型の胸に乗ったまま、大きく振りかぶってあご蹴りあげ、攻撃力を無力化すると、両肩、両大腿骨、そしてあごを立て続けに蹴り飛ばした。
ここまで痛めつければ、素人同然のロカでも倒すことができるだろう。
それにこのモンスターを倒せば、一気にレベルアップが可能だ。なぜなら……
「おじさんー、まだー? こっちはとっくに撮影の準備整ったんだけど!」
「ん? ああ、悪い悪い、コイツで仕上げだ」
俺は、恐竜型から飛び降りると、足を引きづりながら逃げようとする恐竜型の背中を蹴り飛ばして背骨を折ると、ロカに向かって手をあげた。
「いいぞ! いつでも撮影を開始してくれ!」
「オッケー! じゃあ、はじめるね!」
ロカはカメラのスイッチを押す。するとカメラはフワフワと浮いてロカの顔の正面で止まった。
「さあ、今日も始まりました! L・O・V・E・L・O・K・A! ラブロカチャンネル!! 応援よろしくね! 今回から撮影アシスタントが加わります!」
そういうと、ロカはカメラを俺に向けてくる。
「撮影アシスタントの……えっと名前なんだっけ? ま、いいや『おじさん』です!!」
俺の名前、おぼえてないのかよ! 俺は心の中でつっこみながらカメラにむかって会釈をする。
「それじゃあ、さっそく探索を始めるよ!
今日はいよいよ恐竜型を倒しちゃいます♪」
そう言うと、ロカは遠くにいる恐竜型にカメラを合わせる。
「恐竜型は、この
倒すには強力なあごの攻撃を避けつつ、地道な攻撃が必要です。
でも、それって、とってもめんどうですよね♪
そういうわけで、モンスターの差し替えをすることにしまーす!!」
そう言いながら、ロカは足を引きずり逃げている恐竜型にカメラを向ける。
「それじゃあ! とどめ行っちゃうよん!
カードリッジセット!!」
ロカは、ショートソードの柄にあるカードリッジに、赤い色の『シェールストーン』をセットする。するとロカのショートソードは、たちまち紅蓮の炎につつまれた。
ロカは、炎につつまれたショートソードをたずさえて華麗に疾走する。
ひざ上丈のフレアスカートからは、髪色と同じパールホワイトのショーツがチラリチラリと見えている。
ロカは恐竜型を射程にとらえると、くるりと横回転をして反動をつける。
フレアスカートはフワリと風にまって、チラリチラリと見えていたパールホワイトのショーツは、丸見えのモロ見えになった。
「いっくよー! フレイムソード!」
ロカは決め台詞を叫びながらショートソードを上段に振り上げる。
「ごぎゃああ!!」
ロカが恐竜型に紅蓮の剣を振り下ろすと、恐竜型モンスターは、真っ二つに切り裂かれて霧のように消え去ると、大量の『シェールストーン』へと変わっていく。
「え? え? ちょっとこれ、多すぎない?
ねえ、おじさん、どういうこと??」
ロカのやつ、なにをおどろいているんだ? 俺は答える。
「モンスターは『部位破壊』をすればするほど『シェールストーン』をたくさんドロップするんだ」
「え? そうなの?? 初耳なんだけど!!」
「なんだ。知らなかったのか? 今回は、アゴと肋骨と両肩、両大腿骨、それから背骨を破壊しておいたから、『シェールストーン』のドロップ数は通常の8倍の計算になる。獲得経験値も通常の8倍だ」
「なにそれ? すごすぎなんだけど!!」
ロカはスマホを取り出すと、大急ぎで画面を確認しながら、独り言を言い始める。
いや、ライブ配信の視聴者コメントを読んでいるのか? 知らんけど。
「…………だよね! だよね!! とんでもない情報だよね!! うわーコメント欄の書き込みが読み切れないよぉ!」
ロカは、スマホを見ながらしきりに興奮をしている。
え? そんなにすごい情報なの? これ。
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