第5話 おじさん、美少女配信者のADになる。

「ちょっとぉ! 撮影の邪魔しないでくれる!!」


 ……え? どういうこと??


 少女は慌てた声で、空中に浮遊するカメラに向かってしゃべりはじめる。


「あ、えっと、今日はもう配信を終了するね!

 次回の配信は、アタシのSNSをチェックしてね♪

 それじゃあ、最後の合言葉♪ L・O・V・E・L・O・K・A! ラブロカチャンネル!! チャンネル登録よろしくね♪」


 少女は、俺の腕の中で、とびっきりのスマイルで配信を終了すると、すぐさま俺を睨みつけた。


「ちょっとぉ、いつまでアタシを抱っこしてるのよ!」

「え? あ、ああすまない……」


 俺は、言われるがまま少女を地面に下ろすと、少女はプリプリと苛立ちながら俺をどなりつける。


「もー! せっかくライブ視聴者が100人超えてたのに! なにしてくれんのよ!」

「なにって、モンスターに捕まってたから助けて……」

「あんなの、演技に決まってるでしょ! アタシがカメレオン型なんてザコザコモンスターにやられるわけないじゃない!」

「演技??」

「そう、演技!! 捕まったふりをして、絶妙なお色気ショットで視聴者サービスをしていたのに……おじさんが邪魔するから!」


 そ、そうだったのか……でも、視聴者サービスでパンチラはちょっとやりすぎじゃあないのか……。


「あ、おじさん、今エッチなこと考えたでしょ♪」


 少女は、にまにまと笑みを浮かべる。


「んふ♪ 平気平気、だってこれ見せパンだもん!」


 そう言うと、少女はガバッとスカートをたくしあげる。

 少女が見せパンと主張するパールホワイトの布は、結構、いや、かなり布面積の少なくって細やかなレースが入っている。どう見てもふつうの下着、いや下手したら普通の下着よりも煽情せんじょう的だ。


「そ、そうか」


 俺は返答に窮して、あいまいな返事をすると、少女はたくしあげたスカートを離す。スカートはヒラリと舞って、パールホワイトのレースの下着……いや、見せパンをかくした。


「アタシみたいな駆け出しは、多少は無理しないと視聴者が増えないんだもん。はぁ……今日は絶好のチャンスだったのになぁ。それを、おじさんが邪魔するんだもん」

「……すまない。なにか埋め合わせはできないか?」


 気まずくなった俺がつぶやくと、少女の目がキランと光った。


「じゃあ、オジサン、コンビを組んでくれない?」

「コンビ?」

「そう、コンビ! おじさんは、モンスターをいい感じで弱らしてちょうだい!

 でもって、そっから撮影を開始して、アタシが華麗にとどめを刺すの!

 もちろん、パンチラ付きのサービスショットで!!」

「それって八百長じゃないのか??」

「演出って言ってちょうだい!! 今はダンジョン配信戦国時代なのよ! ありきたりの映像じゃあ視聴者は満足しないのよ!!」

「は、はあ……」


 ダンジョン配信戦国時代?? そんなに流行ってるんだ……。


「さっきのファイアボールを見た限り、おじさん、結構腕が立つみたいだしさ!

 ギャラも弾むわよ! 配信インセンティブは50%ずつ。あとモンスターがドロップした『シェールストーン』は、全部オジサンにあげるから!」

「え? 本当に??」


 俺は、破格の待遇に驚きを隠せない。配信インセンティブってのがいくらになるのかはさっぱりだが、『シェールストーン』を全部くれるなんて、この少女、なんて太っ腹なんだ。


「ん。その表情を見るに交渉成立ってことで良さそうね!

 アタシはロカ。露花つゆはなロカ。17歳! 高校2年生よ! よろしくね、おじさん!」


 そう言うと、少女は満面の笑みで手を差し出してくる。


「俺は、田戸蔵たどくら小次郎こじろうだ。よろしくロカ」

「んふ、よろしくね♪ おじさん!」


 俺がおずおずと手を差し出すと、ロカは、俺の手を力強く握りしめてきた。

 こうして俺は、JKダンジョン配信者のADとして働くことになったのだった。

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