あの遠い日々の初恋は今や、『背徳』《初恋に破れたバスケットマン東大生が現実逃避先の種子島で『初恋の形をした少女』と出逢い、ロリコンになってしまった話》

@sinotarosu

第1話:東大目指して10代で勉強ばかりしていたら、いつの間にかロリコンになっていた。

 俺——渡(わたり) 春(はる)は、ロリコンには二種類の人間がいると考えている。

 一つは、アニメや漫画等の二次元コンテンツに触れていく内にロリコンになってしまった人間。

 そしてもう一つは、初恋の少女の姿を何年経っても忘れられなかった為、ロリコンになってしまった人間。

 俺は後者の人間だ。

 それ程までにあの少女は——今や女性となってしまった少女は小学五年生当時、完全な存在として幼い俺の目には映っていた。

 なってしまった、と今言ったけれど、俺は今でもあの女——高木(たかぎ)夏海(なつみ)の事が多分好きだ。俺の家の坂の下に住む少女。体は俺の近くにあるのに、心は遠くにある少女。少女だった女性。

 二十歳となった夏海(なつみ)も好きだけど、最期に逢った一年半前、夏海(なつみ)が「もう私に関わらないで」と言ったあの時、何かが俺の中で崩れた。


 中三で告白した時は「付き合っている人がいるの、ごめんね」。高三の時は「どうしても付き合えない、ごめんね」。一年半前の、東大入学直前の三月の時は「もう私に関わらないで」。


 小学校の卒業式の日から数えて俺が八年間追いかけてきた少女は、今やあの無垢さを失ってしまっていた。

 黒色ショートだった髪は茶髪ロングに。あの小さかった指先には、赤いネイルが。

 でもそれが、「優しくて眩しい小学生時代の夏海(なつみ)に見惚れてしまって、その幻影を追いかけ続けて二十歳になってしまった、俺の責任」なのは自覚している。彼女のせいじゃない。


 俺は、十代の時間の中で凄く頑張った。初恋の少女に相応しい男になる為に、頑張った。

 小学六年生の時まではマラソン大会万年ビリのスポーツ音痴だったのに、高校バスケ最期の夏の県大会にて、部を優勝させ、全国インターハイ出場へ導いた得点王になる程に成長した。

 勉強だって小学生の頃は最下位だったのに、一浪したとはいえ東京大学に入学できる程に成長した。

 だがそこまでしても、初恋は手に入らなかった。初恋に呪われ、ロリコンと化した。


 今、俺は東京大学を休学して鹿児島県の種子島にいる。関東という辛い現実から目を背ける為、この種子島にやってきた。そして、この島で「初恋の形をした少女」と出逢った。

 彼女に恋をした。ニ十歳の男が、小学六年生の女児に恋をした。


 まずは、俺がロリコンになってしまった小、中、高校時代の経緯を、どうか聞いて欲しい。

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