第2話
出発前夜、旅の荷物を用意する。
旅という言い方は少し大袈裟かもしれないが、車中泊も含めれば2泊3日だ。もはや小旅行という気分だった。
クレジットカードや運転免許証などは、現金と一緒に、常に財布の中に入っている。常備薬はもちろん、健康保険証も念のため持っていくべきだろう。着替えと一緒にスマホの充電器も鞄に入れて、歯磨きセットや髭剃りなども……。
そこまで準備した段階で、ふと思いつく。
「そういえば、久しぶりに夜行バス乗るんだったな」
私は大丈夫だったが、学生時代の友人の中には「夜行バスは眠れないから嫌だ」と主張する者もいた。
いくらシートを倒せるとはいえ、そもそもベッドではなく椅子なのだから、寝心地の悪さも多少は仕方ないだろう。それに加えて、他の乗客や車内の明るさなどが気になる場合もあるらしい。
今では私も学生の頃ほど若くはないのだから、昔と違って、そうした不満を感じるかもしれない。だが椅子という構造上の問題はともかく、後者に関しては耳栓やアイマスクなどで対応できるはず。
かつての記憶によれば、夜行バスは運行会社次第でサービスが異なり、使い捨ての耳栓などが座席に用意されている場合もあれば、そんなサービスはない場合もあった。ならば、自分で用意するに越したことはない。
耳栓ならば、外でノートパソコンを開いてデスクワークする際に使うので、いくつか買い置きがあった。そのうち
アイマスクは日頃使う習慣がないので、100円ショップあたりに買いに行こうと思ったが……。
「あれ?」
一応部屋を探してみたら、文房具や小物などを入れている引き出しから、アイマスクがひとつ出てきた。
アイマスクといえば黒色のイメージだが、これは青色だった。水色みたいな薄い青ではなく濃いめの青色で、紺色とも少し違う。緑や黄色の成分が少し混じっているのだろうか。
これだけ濃い色ならば、黒と同様、光を遮る効果も高いはず。
いつどこで手に入れたのか不明なので、何かの機会に買ってそのまま忘れていたに違いない。
ちょうどいいから今回この青色アイマスクを使うことにして、これも鞄に入れた。
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