胎道の夢

@illthy

第1話

  胎道の夢


 とある赤子二人がこんな話をしたそうです。

「なあこれってさ胎内めぐりって言うんだろ?」

「はあ? 体内? 体ん中ってこと?」

「違う違う。俺らが生まれて世に出てくるまでの道だよ」

「ああ産道か。いきなり訳分からんこと言うな」

「すまんすまん。けど俺にはもうそうとしか感じられなくなってきた」

「へえ、なんで?」

「だってさあ、狭いし暗いし曲がりくねってるし、速いし怖いし」

「はっははお前! 怖いだってよ!」

「いやあ、怖いよ。実際本当のところ怖いだろ、お前だって」

「おいおいやめてくれよ。せっかくこんなに爽快なのに」

「そうかい」

「ぎゃはは!」

「全く怖くなさそうだね」

「お前も今は楽しんでるだろ?」

「まあね。この中のゴーッて音もなんだかいいもんだな」

「ホワイトノイズだろ? 子宮の中の音に似てんだってな。まあ俺らにはもう関係ないけどな」

トンネルを抜けると、そこは雪国でした。

「これから毎日山道ドライブだぜ!」

「おい危ない! S字結腸みたいなカーブが!」

「んあ! 曲がりきれない!」

「んあああああああああ!」

人は世に出た瞬間が最も無防備と言います。

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