第13話

次の日の朝のことであった。


あいつとひどい大ゲンカをしたアタシは、ボストンバックに着替えとメイク道具を詰め込んで荷造りをした後、ボストンバックと赤茶色のバッグを持って家出した。


会社をやめたあいつは、ハローワークへ行って仕事を探すことにした。


あいつの家をすてたアタシは、福山市東桜町にあるマンスリーアパートへ移った。


アタシは、あいつの家とリエンすることを前提にひとり暮らしを始めた。


神辺のフジグランのバイトはやめた。


セブンイレブンのバイトは、店主のむすめむこさんが桜馬場町でフランチャイズ経営をしていたので、そこへ移って働くことにした。


夕方5時から夜10時までセブンイレブンでバイト…


深夜11時から翌朝6時までは福山市内のデリヘル店で働く…


…の昼夜逆転の暮らしに変わった。


片やあいつは、福山市内しないにある建設会社に住み込みで働くことになった。


この時、家庭は極めて危険な状態におちいった。


二人が家出したと言うのに、義父母はさらに無関心の度合いを高めた。


義弟おとうとは、立てこもり事件を起こしたあとSAT隊員たちによって公開処刑しょけいされた。


しかし、義父母は『けいすけは、うちの戸籍せきを外したからカンケーない!!』と投げ出す言葉で言うた。


あいつとアタシが離婚したことについても『あっそう…離婚したかったらしなさいよ…うちはもう嫁なんか必要ないから…』と言うて突き放した。


今の義父母は、義姉あねを超がつくほどデキアイしている。


義姉あねの結婚については『そのうち、白馬の王子さまが迎えに来るから…』と言うてノンキにかまえていた。


義父母は、ものすごくはぐいたらしいわねぇ!!


デキアイされた義姉あねも、たまったもんじゃない!!


そうしたことが原因で、家庭が大規模な崩壊を起こす一歩手前におちいった。


あいつがやめた会社の人で現場主任の久永ひさながさんがオタオタしていた。


久永ひさながさんは、何とかしないと危なくなると思ってアタシのもとにやって来た。


久永ひさながさんがアタシのもとへやって来たのは、アタシが神辺かんなべの家を飛び出してから7日後の夜であった。


アタシがバイトをしている桜馬場町のセブンイレブンにて…


久永ひさながさんは、女々しい声でアタシに助けてくれと言うた。


久永ひさながさんに女々しい声で言われたアタシは、思い切りブチ切れた。


アタシは、ゴミ箱を整理しながら久永ひさながさんに言うた。


「あのね久永ひさながさん!!章介クソバカはアタシの顔をグーで殴ってケガを負わせたのよ!!今のアタシは、身も心もズタズタに傷ついているのよ!!ほやけん(だから)クソッタレの親族全員をのろい殺すと訣心けっしんしたのよ!!アタシは女ひとりで生きて行くとめて再出発したところよ!!…それよりも、アタシはバイト中だから帰ってよ!!」


アタシが言うた言葉に対して、久永ひさながさんは女々しい声で言うた。


「としこさん、あいつがとしこさんに暴力をふるったことについては、私が全責任を負います…あいつは苦しんでいるのだよぉ…あいつを助けてくれよぉ…」


久永ひさながさんに女々しい声で言われたアタシは、し烈な怒りを込めて言うた。


「よくもアタシを冒とくしたわね!!」

「冒とくしていません…」

「はぐいたらしいわねダンソンジョヒ魔!!」

「ぼくはダンソンジョヒ魔ではありません…」

「ふざけるな!!あんたはDV魔のクソッタレをヨウゴしたから呪うわよ!!」

「とし子さん、あいつがとし子に暴力をふるったことについては、ぼくが代わりにあやまります…許してください…この通りです…」


アタシは、冷めた声で久永ひさながさんに言い返した。


「あやまると言うのであれば、本人をここへ連れて来なさいよ!!」

「分かってます…だけど、本人は体調を崩していて…」

「病気を理由に逃げるなんてヒキョウよ!!」

「とし子さん、それじゃあどうすれば許してもらえるのですか?」

「命でつぐなうのよ!!」

「それって、ぼくに死ねと言うのですか!?」

「その通りよ!!」

「困ります…」

「帰んなさいよ!!帰らないとアタシの知人に電話するわよ!!」

「知人って…」

「アタシの知人は格闘家よ!!知人の知人のそのまた知人にヤクザがいるのよ…今治のヤクザ組織の組長の耳にダンナがアタシに暴力をふるったことが入ったら、あんたの会社はダンプカーでぺちゃんこにつぶれるわよ!!」

「困ります…」

「ほんなら帰れ!!」


久永ひさながさんを怒鳴りつけたアタシは、再びバイトを再開した。


あいつがDV魔になった原因を作ったのは義父母よ…


義父母があいつを過度に甘やかしていたからダンナがDV魔になったのよ…


なにが『私たち両親は一生懸命になって育児をしました。』よ…


きれいごとばかりほざくな…


久永ひさながさんは『あいつはコミュニケーションをうまく取ることができない…』と言うた…


けど、病気を理由に逃げようなんてそうはさせないわよ!!


ところ変わって、店舗の奥の部屋にて…


アタシは、洗面台の流しにためた水の中に顔をつけていた。


(ブクブクブクブクブクブクブクブクブクブク…バシャーン!!)


アタシが流しから顔を出した時、鏡に水滴が思い切り飛び散った。


鏡に写っているアタシの顔は、髪の毛がただれて目が真っ赤に染まっていた。


アタシは、肩で荒い息づかいをしていた。


何なのよ一体…


久永ひさながさんは、アタシにどうしてほしいというのよ!?


DV男をどうやって許すのよ!?


許してもらえないのであれば死になさいよ…


こうなったら…


あいつの家の親類縁者全員をひとりずつのろい殺すしかないわ…


このままでは…


アタシは、あいつの家の親類縁者たちに殺されてしまう!!

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