第15話 いざ、出航
海賊たちの楽園での戦いから数日後。
戦いの後で気絶した俺は、目を覚ますとシンの
なんでも死んだように眠っていたらしく、シンによればカナとの合体のせいで精神力を著しく消耗したのだろうということだった。慣れればもっとスタミナも付くさとは、シンの言。
襲ってきたロボット兵の残党は、シンたちとカナが協力して撃退したらしい。しばらくは追撃はないだろうという話だが、いつまでもここで世話になるわけにもいかない。
俺は目覚めて早々に、出発することに決めた。一刻も早くクラスメイトたちと合流したいし、更なる追手が来ないとも限らないからな。
そんなこんなで。
港でトワが船のエンジンを温めて準備している間に、俺はシンから今後の旅に必要な情報や地図などをもらいつつ、別れの挨拶をかわしていた。
「色々とお世話になっちまったな、シン。それと、俺のせいでここを襲われたのは本当にごめん」
「あっはっは、気にするなよお兄弟。そんなことより、おまえさん気を付けるこったなあ。人ならざるモノと一度縁を結んだからにゃあ、覚悟を決めるこったよ」
言葉の軽快さとは裏腹に、シンの顔つきはいたって真面目なものだ。
「覚悟?」
「そりゃあそうだろうさ。言っただろう。あのお姫さんはこの海を統べる魔神、生半可に肩を並べられる存在じゃねえ。そこんとこどう思ってんだい、兄弟は」
確かに、カナの正体とか立場は今の俺がどうこうできるほど軽いものじゃないのはわかっている。だけど、だからこそできることは一つだけだ。
「決まってるだろ。俺はカナの横に立って、一緒に冒険する。それだけだよ」
「―――。ははッ」
俺の返答にシンは右手で顔を覆って、驚いたような納得したような、微妙な笑いを浮かべた。なにか可笑しいこと言ったか、俺?
「いいや、さすがだぜぇ兄弟。それでこそだ。ちゃんとあの娘を幸せにしてやんなよなあ」
「お、おう?」
なんでそんな結婚を祝う親父みたいなテンションなんだ、こいつは。
『マスター。そろそろ出られる、の』
と、そうこうしている内に、出航の準備が整ったらしく、トワから通信が入る。いよいよお別れの時間だな。
「じゃあ、またいつか会おうぜシン。色々と教えてくれてマジで助かったよ」
「気にすんない、水くせえ。―――貴殿に良き海路の巡り会わせがあらんことを」
最後の最後にやたらかしこまった物言いをするシンに手を振って、船に乗り込む。
準備万端といった様子のカナと頷き合い、俺は魔力を船体へ流し込んだ。
豪華客船の巨体がゆっくりと港から入り江へ舵を切り、白波を立てながら大海原へと漕ぎ出しし始める。
正直、先行きにはまだまだ不安しかない。だけどこうして得難い縁を結ぶことができたんだ、これからだってなんとかなるし、してみせる。
「大丈夫よマモル。アタシが一緒だもの!」
『抜け駆けは許さない、の。わたしも一緒、なの』
安心してと言わんばかりの笑顔でカナが手を握ってくる。脳内ではトワも優しい声音を出して励ましてくれている。俺なんかにはもったいない二人だ。彼女たちに報いるためにも、最後まで全力で前に進むと決めた。
「
シンからもらった黄金の
目指すは、この世界で最も広大な土地を持ち、女神が支配すると言われる神聖帝国〈オラクル〉が存在する巨大大陸〈パンゲア〉。
「さあ―――。出航だ!!」
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