第20話柊の選択
重苦しい雰囲気の中、口を開いたのは権田
だった。
「か~!完全犯罪だな!でも一人でか?」
「権田さん、だから私は、おかしいって
言ったじゃ無いですか!」
「でも柊、これだけ証拠を完璧に消されたら
行った所で、引っ張れ無いぞ!」
「そりゃそうですけど、でも歯止めには
なったかも!」
「おい!早川!」
「なんすか?」
「北海道の愛別岳を調べて、管轄の署に
男女の遺体確認をしろ!」
「分かったっす」
直ぐに調べる早川。
その間、権田と柊は、お茶を飲んで気持ちを
落ち着かせていた。
そして早川が
「確認取れたっす!男女の遺体が見付かって
その二人は、手をロープで縛っていて、その
二人の手の間には、位牌が握られてたそうっす!そして、死顔は、とても穏やかだった
そうっす!」
聞いた権田、柊は又、やるせない思いに
胸が締め付けられた。
「か~!三人で旅立ったのかよ!」
「権田さん!私、手紙に書いて有った
及川美弥さんに、一度会いたいんですが?」
「柊、お前は高井さん夫婦が、命を掛けて
守ろうとした、及川さんに会って、どう
する気なんだ?」
「私は、高井愛奈さんの遺体確認の時しか
高井歌保さんに会っていません、でも
その彼女に、今凄く興味が有りまして」
「珍しいな、お前が人に興味を持つなんて?」
「本当っす、柊さんは可愛いけど、やっぱり
変人すね!」
「早川~あんたね?分かってるよね?」
柊は、ファイティングポーズを取る。
それを見た早川は、権田の後ろに隠れて
「柊さん、冗談すよ、許してくださいで
ございまする」
「プフッ、もういいよ、早川」
「ありがとうでございまする」
直ぐに権田は、早川を自分から離す。
「柊、お前他の事件は、どうするんだよ?」
「だから休みの日に、行って来ます」
「お前、相手は思春期だから、気を付けろよ!」
「気を付けるっすよ!」
キッと早川を睨む柊。
早川は目を逸らして、固まる。
「はい、気を付けます」
そんな話を、して居ると一人の警官が
やって来た。
「失礼します、あの刑事課の皆さんに
会いたいと木村泰造って方が、見えてるん
ですが、どう致しましょうか?」
「木村泰造って!」
「あ~多分、あの木村泰造だろうな!
あ、入って貰ってください」
「はい、では私は失礼します」
そして、怒りで顔の歪んだ、木村泰造が
入って来た。
未だに態度は、横柄だった。
「この手紙を、見ろ!」
木村は一通の、手紙を差し出した。
権田、柊、早川は、その手紙に目を通した。
「どうだ!これは詐欺だろ!」
「まぁ、この手紙を読む限りでは、明らかに
あなたから、お金を取り上げる為に嘘を
付いてますね」
「じゃあ、直ぐに捕まえろ!」
「は~そう言われましてもね~」
「なんだ!お前達は犯罪者の見方か!」
木村の言葉使いに、ウンザリしている
三人。
「実は、その高井歌保さんは、亡くなり
ましたよ」
「な、何だと~じゃあ、俺のお金は、どう
なるんだ!」
「もう亡くなってますから、諦めるしか
無いですね」
「何を言ってるんだ!お金を探せ!
お前達の仕事だろ!」
「は~木村さん、そのお金は、高井歌保さんが亡くなる前に、寄付して居るので、もう
取り返し様が無いですね」
「き、寄付?人の金を、寄付しただと!」
「どうしますか?事件にするなら、被疑者
死亡で書類送検しますが?」
「もういい!死んで金も、戻らないなら
意味が無い!」
そう言うと、木村は帰って行った。
その姿を、ただ見ている三人。
「何?あの木村泰造って!元県会議員
でしょう?」
「最悪っすね!なんすか?あの言葉使い
自分が一番偉いと、思ってるんすかね?
それに、金、金とうるさいっす!」
「本当だな!あんな人が、県会議員なんて
祖父母や、親の影響を、子供は受ける
からな!もっと人間らしさが有れば
今度の、そもそもの事件は起きなかった
かもな!」
「そうですね」
「僕、子供が出来たら、ちゃんと愛情を
注いで、子育て頑張るっす!」
「うん?」
「え?」
「なんすか?」
「早川~お前、結婚もして無いのに、何を
言ってるんだよ!」
「そうそう、彼女も居ないのに、笑わさないでよ~」
「じゃあ、柊さんが僕の、彼女になるっすか?」
「早川~私は、強い男が好きなの」
「え~!権田さん、これから僕に、稽古を
付けてくださいっす!」
「バ~カ、俺は、そんなに暇じゃ無いんだよ!」
「え~!」
崩れ落ちる早川。
それを見て笑う、権田、柊。
そして柊は、休みの日に及川美弥を訪ねた。
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