第5話権田との練習

空手有段者の私達は共に黒帯だった。

早川は、道場の1番隅にチョコント

座って居る。

何故か、1番緊張している様に見える。


「権田さん、よろしくお願いします」


「よろしくお願いします」


組んだ瞬間に、権田さんに隙が無いのが

分かる。


(どう攻めようか?まずは防御か?)


なんて考えていると、権田さんの上段蹴りが

飛んで来る。

とっさに交わす私。


(危な~防御より攻めないと、練習に

ならないな)


私は突きを出して、直ぐに蹴りを出すが

難なく交わされる。


(そうだ、蹴りを入れて、すかさず後ろ

回し蹴りだ、これを試してみよう)


(うん?柊の目が変わったな?仕掛けて

来るな!)


そして先に突いて蹴りを入れて、そのまま

後ろ回し蹴り。


(うん、感触が有った)

「いて~柊、手加減しろよ!」


「え?だって権田さんが、相手だから必死

ですよ」


「そういう攻めを、使って来たか、よし

来い!」


(権田さん相手に、同じ攻めは通用しないな

次は蹴りから入って、間合いを詰めて突きに

行こう)


だが、さすがの権田さん間合いを詰めさせては、くれない。

緊張している早川は、手を握り締めている。

今度は権田さんが、仕掛けて来る。

長いリーチを活かして、突きを連発そして

怯んだ所に蹴りが入る。


「か~避けれませんよ~!」


「何を言ってんだよ、全国に行ったら

こんな選手は沢山、居るんだぞ!」


「そうですね、じゃあ、もう1本お願い

します!」


「お~来い!」


私も突きと蹴りの、スピードを上げる様に

して、わずかな隙を見逃さない様に

攻撃を仕掛ける。

こういう練習を、1時間もすると2人共

グッタリだった。


「今日は、これまで」


「ありがとうございました!」


その声と同時に、早川がやって来る。


「お疲れ様っす、はい!これ」


と言って、私達に冷たいスポーツドリンクを

くれた。


「お~早川、気が利くな!ありがとうな」


「早川~ありがとう」


「そんなに、お礼を言われたら、照れるっす

2人の練習は凄いっす、警察学校の時にも

あんな組み手は、見た事が無かったっす」


「早川~権田さんは、元全日本チャンピオン

だよ!」


「えっ!マジっすか?」


「早川~マジっすよ~!」


と笑う権田さん。


「え~!これからは朝、権田さんに1番に

コーヒーを入れる事に、致しまする」


「何それ~早川?強い人に乗り替えたの?」


「人間、生きて行く以上、強い人に着いて

行くっすよ」


「でも早川?柊もチャンピオンだぞ?」


「あ~僕は、どうしたら良いのでござるか?」


「ハハハ」


「ハハハ」


仲の良い3人だった。

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