自己中な男

 俺には同じ高校に通っている彼女がいる。だけど、彼女はやらせてくれない。潔癖っぽい感じだな。セックスは汚い行為…激しい運動でいろいろ汚れるので間違えてはいないかもな。

 俺は彼女の潔癖な性格が好きだった。自分が碌でもない男だって自覚があるからな。無い物強請り…?憧れみたいな感じかもしれない。



 彼女がさせてくれないから性欲が溜まる。潔癖な彼女を乱れさせたいという欲望を普段から抑えているからな…どうにか発散させないと彼女の事を襲ってしまいそうだ。…そんな事をしたら俺に失望した彼女に別れを告げられてしまう。それだけは避けなければ…


 悶々としながら過ごしていたある日、図書室で地味な女を見つけた。…見つけてしまった。脅せば黙って言う事を聞く…そんな感じの女を発見した俺は、準備室に連れこんで襲ってしまった。

 泣きながら男の名前を呼んでいるその女…興奮した。人の女を無理矢理奪う。これから俺の女にする。征服欲と性欲は肥大化し、俺はその女を何度も抱いた。

 泣き叫びながらも感じている女が滑稽すぎて嗤うしかない。この女は当たりみたいだな。


 満足したので最後に画像を保存して脅しておく。


 「彼氏いるんだろ?バラされたくないならわかるよな?」


 女から返事は無かった。初めてっぽかったからショックだったのかもな。まあ、いいや。今日は連絡先を聞くのは諦めてまた後日聞く事にしよう。汚れた女をその場に残して俺はその場を離れた。久々に満足できた。これで明日から安泰だな。



 …そう思っていたのに、1週間経ってもあの女を見つける事ができなかった。図書室にいたもやしっぽい男に聞いたらあの日から休んでるとか…クソが。レイプされたくらいで休んでんじゃねぇよ。俺の性欲はどうすんだ?無責任な女だぜ…


 イライラする。あの女は3週間経っても登校してきていないらしい。俺はその女の事を考えすぎていて、彼女の事に気を配る事ができなかった…


 「別れましょう」


 「…え?…何だって?」


 「私、好きな人が出来たの。だから別れましょう」


 「待ってくれ!」


 「…貴方も他に好きな人がいるんでしょう?ずっと図書室に通ってるらしいじゃない…」


 「違う!アイツはそんなのじゃない!俺が好きなのは君だけなんだ!」


 「…本当に?」


 「ああ。信じてくれ」


 「…わかったわ。酷い事を言ってごめんなさい。他に好きな人なんていない…貴方が私と別れやすくする為の嘘だったの…」


 「いいんだ…俺のほうこそ寂しくさせてごめん…」


 彼女をそっと抱きしめる。彼女の柔らかい体を貪りたいという衝動を必死に抑える。…あの女のせいで彼女に心配をかけちまった…絶対に許さねぇ…


 あの女を襲って1ヶ月…ようやく登校してきやがった。なんか男が隣にいるな。面倒くせぇ…

 放課後…男が少し離れた隙を狙って女を校舎裏にある倉庫に連れ込んだ。女は画像で脅すと真っ青になりながら大人しく従った。


 「お前の連絡先を教えろ」


 「…嫌」


 ポケットからプリントした画像を見せる。女の顔がハッキリとわかる襲った時の画像だ。


 「一緒にいた男や友達に撒くぜ?」


 「……うぅ」


 泣きながらメモ帳に番号を書いて連絡先を教えてきた。確認の為にかけてもコールしなかった。嘘の番号ね…なるほど。そういう事をするのか…


 「…お前、舐めてんのか?」


 「………」


 地面に崩れ落ちて泣いている女…ふざけやがって…


 「おい!泣いてないで早く教えろ!」


 泣きながら首を振って拒絶する女…俺の苛立ちは頂点に達した。連絡先を聞き出してから犯そうと思っていたが…もういい。この女の事は諦めよう。今日、滅茶苦茶にした後に解放してやる事にする。

 女のシャツを力任せに引き千切る。激しく抵抗してきたが…女の抵抗なんて可愛いもんだ。無理矢理抑えつけた瞬間…


 「何をしてる!」


 倉庫の入口から男が入ってきた…俺の彼女を連れて…チッ…男が離れたのは彼女と接触する為だったのかよ……この場所に来たのは女のスマホの位置情報か?クソが…俺を嵌めやがったな…


 「嘘…本当に…」


 彼女は信じられない物を見るような目で俺を見ている。…もう誤魔化せないか。


 「…君が悪いんだよ?君がセックスは嫌だって言うから…この女を代わりに使うしかなかったんだ…」


 女から離れて彼女と向き合う。やっぱり、ちゃんと向き合って話さなきゃダメだよな。


 「君がやらせてくれるならもうこんな女はどうでもいいんだ…だからさ、やらせてよ?」


 恋人なんだからセックスくらいするだろう。いや、するべきだ。そう思って彼女に近付く。


 「……来ないで」


 …彼女は俺を拒絶した。もういい。大切にしてあげたかったけど…仕方ない。強引に彼女と愛し合おうと思って彼女に近付くと、顔に強い衝撃を受けた。


 「グァッ!」


 「…さっきから何を訳のわからない事を…俺の彼女を『こんな女』だ?ふざけてんじゃねぇぞ!」


 「…いってぇなぁ…あの女はちゃんとイケるように仕込んどいたからよ?むしろ感謝して欲しいね」


 「…お前…死ねよ」


 何故か男を怒らせてしまったようだ。何回かの激痛の後、俺は意識を失った。




 数日後…俺は全身の骨折で入院している。あの女は俺に被害届を出したらしく、俺は怪我が治ったら少年院に入らなきゃいけないそうだ。ポケットの中の画像のせいで言い訳もできなかった。スマホも没収されているので画像をネットに流して復讐もできない。…酷い話だ。

 俺だけが損をしている気がしたので俺はあの男に対して傷害の被害届を出そうとしたが、ダメだった。情状酌量がどうとか。あの男は数日の停学だけで済むらしい。ふざけてる。不公平だ。俺は全治5ヶ月なのに…


 彼女とは連絡はとれないが…きっと、俺の事を心配してくれているはずだ。あの時に俺を拒絶したのはちょっと驚いただけ…あの男が邪魔をしなければあの場で愛し合っていたはずだ。

 彼女と会えないのは寂しいけど、俺と彼女の関係がすぐに壊れる訳がない。遠距離恋愛みたいなものだろう。



 1年後…俺は少年院で過ごしている。彼女は1度も面会に来ないけど、きっと恥ずかしいだけなんだ…

 精神に異常がある可能性が高いとか失礼な事を言われてカウンセリングを受けたけど、特に問題ないそうだ。当たり前だけどな。

 ここを出たら彼女と結婚しよう。彼女との幸せな結婚生活を想像しながら…俺は毎日を過ごしている。

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