翻弄された女 後

 私は男の子が苦手だった。大きな声で話しかけられると体が萎縮してまともに話もできない。

 そんな私だったけど、落ち着いた雰囲気の彼だけは話しても平気だった。私の話を静かに聞いてくれて隣にいてくれた彼に惹かれていったのは自然な事だったと思う。


 彼と付き合って1年。彼に何かお礼をしてあげたくなった。彼に聞いても傍にいてくれるだけでいいって…

 いつも傍にいてくれて救われているのは私のほうなのに。だから勇気を出して友人に聞いてみた。そしたら…男の子はエッチな事をしたら喜ぶんじゃないかって…

 私は本とかでそういう知識は知っていた。でも、彼とはまだキスもしてない。……頑張ってみよう。


 彼に家に送ってもらって部屋に招いた。何回かは招いた事があるけど…今日はいつも以上に恥ずかしかった。

 一緒に勉強をして、途中の休憩の時に勇気を出して彼にキスをした。恥ずかしくて頭が真っ白になった。彼は驚いていたけど少し顔を赤くしてた。喜んでくれたかな?

 恥ずかしくてしばらく会話できなかった。帰り際に彼が照れくさそうにありがとうって…喜んでくれたみたい。良かった…


 友人に結果を報告すると笑われた。子供かって…私なりに頑張ったのに…

 その後もいろいろ教えてもらった。友人とデートコースを下調べしているとクラスの賑やかな男子と会ってしまった。

 何故か流れでデートコースに付いてくるとか…友人がいるから…大丈夫だよね?


 予定に無い服屋に寄って賑やかな人が私や友人に服を薦めてくる。


 よく似合ってるね。可愛いよ


 息をするように出てくる誉め言葉。彼とは真逆な人なんだな。彼なら顔を赤くしながら頑張って言う言葉だ。


 それからも友人と一緒にいると賑やかな人が話しかけてくるようになった。

 友人と一緒に帰っていると狙ったかのように賑やかな人と会う。まさか…

 

 休憩時間に友人を問いただした。友人は賑やかな人を呼んでいたと認める。男慣れする為だって…


 彼と変わらない付き合いをしながら賑やかな人との距離は近付いていく。友人と3人で遊びに行く機会が増え、友人がいなくても2人で遊ぶ。気付けば引き返せない場所まで来ていた。

 そんな日常でも彼は私に安らぎをくれた。心は彼といたがっている。体は…賑やかな人を求めている…褒められて…流された…

 私を揺らす小さな波紋は既に波になっていた。彼から離されて流されていく私。


 ある日、賑やかな人…いや、体の恋人が怪我をして登校してきた。

 昼休み、心配で聞いてみたら恋人は激しく怒りながら私を無理やり抱いた。ここは学校だ。声を必死に我慢した。

 行為が終わった後、何故か写真をとられた。記念に保存しておくらしい。男の子って…そういうのも欲しがるのかな…


 恋人に昼休みと放課後に求められる。それが日常となって2ヶ月。

 彼とは距離を置いている。行為に溺れていた私は彼に近づきたくなかった。彼まで穢れてしまう。

 だから彼とのやり取りは夜に送るメッセージだけ。今は…このやり取りだけが安らぎだ。



 更に2ヶ月。もう…恋人との行為がないとダメになっていた。

 彼はどうして私を求めてくれないんだろう…。私はこんなに行為に溺れているのに…彼が求めてくれたら…すぐに恋人との関係なんか止められるのに…

 彼が悪いような気がしてきた。彼が求めてくれないから恋人と関係を持ってしまった。

 …そんな考えを持ったまま彼と関わってはいけない。きっとバレてしまう。彼にバレないうちに…関係を終わらせなきゃ…でも…終わらせたら体の疼きが我慢できない…


 恋人が私を抱いてくれなくなった。もう抱いてくれないって…いきなり突き放された…


 どんなにお願いしてもあの日から抱いてくれない…どうしよう…我慢しなきゃ…


 1週間が限界だった。恋人が抱いてくれないなら他の人…彼以外なら誰でもいいから…


 私はいろんな男性と関係を持った。この人達もいきなり抱いてくれなくなるかもしれない。だから手当たり次第に関係を持った。同級生。後輩。教師。みんな私を抱いてくれた…。抱かれている間のほうが冷静だなんて…私はもう…ダメになってるんだな…


 両親から明日から学校に行かなくていいと言われた。私は退学になったらしい。

 教師や生徒と関係を持ちすぎたせいだろうか…明日から…どうしよう…


 もう彼に会う事すらできない…私の最後の理性…私はもう戻れないから…彼にちゃんとお別れを…


 ごめんなさい


 その言葉しか送れなかった。謝る事が多すぎたから…どこから謝れば良かったのかもわからない。送った後に考えた。何が悪かったのかを。



 友人だ。あの女が私と恋人を会わせたのが悪い。全てはそれが原因だ。だから…



 許さない


 私は友人にメッセージを送って復讐の方法を考え始めた…手始めに…私と同じ場所に来てもらわなきゃね…

 


 

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