064 意気込んでる様も可愛い
少し早いがお昼にしよう。
アカネはPバリア2を展開して、テーブルと椅子を設置。
魔石コンロとフライパンを出してささっと料理。今日は鰹節が踊る焼きうどんだ。出汁醤油味である。ダンジョンに来る前に買っていた野菜スープと串焼きを添える。
もちろん、シヴァの分もあるので、二人でお昼にした。
「思ったより、魔物が寄って来るね。臭いも音も遮断してるのに」
「目視だろ。野営するならセーフティエリアになるハズ。ここなら満員ってことはねぇしな。Cランク受験者もそこまで多くねぇだろうし。…ウザくね?」
「人型動物型様々なゴーレムばっかりだけど、どう倒す?」
「倒していいのか?」
「どうぞ。見本、にはならなそうだけど」
「じゃ、参考になるような魔法で。…【影斬撃】」
【影拘束】が触手みたいな影で物理拘束出来るのだから、その触手を細くして斬撃特性与えればいいんじゃね?である。ウインドカッターのように飛ばさないので周囲の被害がなく、範囲指定がし易い。
シヴァ自身は斬れなかったものなんて全然ないが、アカネには便利だろう、と。
結界全周に集まっている魔物たち全部を切り裂き、ドロップに変えた。上手く行った。
…魔物が近過ぎたせいでPバリア2まで引き裂いてしまったので、シヴァが同じ結界を張り直す。結界の方に「シヴァの攻撃も防ぐ」としっかりとイメージしないと、中々防げないらしい。
「……威力あり過ぎだと思うの。ドラゴンブレスも防ぐ結界を切り裂いちゃうってさ…」
「おれが張った結界だから、おれの使う魔法と親和性が高いんだと思うぜ?多分。アカネ、指輪よこせ。登録しとく」
「はい」
指輪型Pバリア2をもらうと、シヴァは今張った結界を登録して返す。前と同じく2m四方の立方体の万能結界だ。
「あ、でも、シヴァが使うから威力がすごいんだよね。周囲全体は無理でも三、四体ぐらいなら、わたしでも…あれ、発動しない」
「魔法防御もある結界の中だから、魔力が遮られるに決まってるだろ。自分が張った結界は例外なだけ。結界自体が自分の魔力だから」
「…あ、なるほどね。ご飯食べてからにしよっと」
…ということで、昼飯を食べてから、アカネは【影斬撃】を試してみたが、中々使い勝手がよかった。
シヴァが使って見せたおかげで、斬撃特化のイメージがかなり明確に出来るらしく、硬化ゴーレムがスパスパ切れる。
ちゃんとステータスにも出た。
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影魔法(影転移、影拘束、影収納、影分身、影斬撃)
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影分身はあいにくとアカネはまだ魔力不足で使えない。
「海フロアの時に教えて欲しかった~」
しかし、アリョーシャダンジョン海フロアで苦労したアカネは、そう嘆く。
「…ああ、そういえば。まぁ、でも、剣術レベルが上がったんだからいいだろ。それに、アリョーシャダンジョン29階アンデッドフロアで使いたい放題だぞ。薄暗い=全部影、なんだから。実体がないレイスでも影なら効果あるかも、だし、ダメなら回復魔法やポーションで」
アンデッドに効果的な回復魔法を付与した特殊弾を作ってもいいが、もう【ユニコーンの角】を使った聖属性の槍があるのに、さすがに甘やかし過ぎか。
「…ちょっとシヴァ。無茶苦茶賢くない?知ってたけど!頑張って鍛錬して再チャレンジだ!」
勝機を感じたらしく、アカネが大いに張り切って拳を握った。意気込んでる様も可愛い。
下手すると他の冒険者たちまで巻き添えで刻みそうな勢いだが、幸い、アンデッドは苦手な人も多いので滅多におらず、28階までで断念するパーティも多かった。
帰路もアカネはランニングで、軽快に魔物を倒しながら進み、【影斬撃】メインで鍛錬もしつつ、魔力が乏しくなったらショートソードにし、魔力が回復したら【影斬撃】で、とたまに水分補給はしていたが、休憩はなしで10階まで戻った。まだ三時前だ。
『…やっぱり、到底泊まりの距離じゃないと思うんだけどなぁ』
アカネは念話でボヤく。
『パーティ全員、体力も持久力もあるとは限らねぇだろ。パーティでレベルを上げるのは効率が悪いし』
『試験もペースに気を付けろってことね』
頷きながら、アカネは冒険者ギルドへ戻り、依頼の物を納品し、達成手続きをして報酬をもらった。
早いことにはさすがに驚かれたが、疑われたりはしなかった。
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