【発売中】無慈悲な悪役貴族に転生した僕は掌握魔法を駆使して魔法世界の頂点に立つ〜ヒロインなんていないと諦めていたら向こうから勝手に寄ってきました〜
第九十九話 ヴァニタス vs モーリッツ+月食竜エクリプスドラゴン
第九十九話 ヴァニタス vs モーリッツ+月食竜エクリプスドラゴン
「オイオイ、ヴァニタスぅ、最初の威勢はどうしたんだぁ? エクリプスドラゴンに攻撃が通じないとわかったら逃げの一手かよ。情けねぇ姿じゃねぇか」
「…………」
「ついでに
安い挑発だ。
だが的を得ている。
邪竜の首元に腰掛けていた百足ごと張り付いたモーリッツ。
頭上の遥か上から観察するようにして僕に投げ掛ける言葉は最初の頃の余裕を取り戻していた。
といってもヤツはもう油断など
言動こそ
「……仕方ねぇ、こっちから仕掛けてやるよ。やれ、エクリプスドラゴン」
「グガアッ!!」
「
対する僕はヤツの指摘する通り、魔力による身体強化を施し地を駆け逃げ回っていた。
僕の習得している魔法でもかなりの高火力を誇る
だが
となると単純な力勝負では有効打はかなり絞られる。
それこそ隙の大きい代わりに高威力の魔法が使用可能な
「……潜孔百足」
恐らくは『百足』の先天属性による魔法、これも僕が
真横に伸ばしたモーリッツの腕を這い、地面へと零れ落ちるのは百足がうねりあった束。
それらは
「……
「ギギィッ!」
高速で動き回る僕相手では稀にしか足元に到達することはない。
だがそれでも僕の行き先へと先回りさせることで行動を制限したり、注意を逸らすことには成功している。
一々地面ごと叩き潰すのも行動を阻害する要因になるしな。
「
「無駄だ! 大百足球体!」
「――――
そして、
距離が離れているのもあるが百足、特に巨大化した百足たちはどれも装甲のような甲殻を纏っており、僕の魔法ですら致命傷を与えられない。
「無駄なんだよ! やれ、エクリプスドラゴン、薙ぎ払え!」
圧倒的な質量を誇る
互いの強みを生かして襲ってくる相手に対して攻め入る隙がない。
さて、ここからどう動くか……。
まず、効果を
あれを破壊する手もあるにはあるが、それは寧ろ逆効果だろう。
いまでこそ制御され暴れ回ることがない
それこそ
首輪を壊すのはナシだ。
僕の切り札の一つ、
なにせ相手は規格外の大きさ。
範囲に限界のある魔法無効化空間ではその巨体すべてを範囲に収めることは出来ず、また生物的な強さから見ても無効化することにほとんど意味はない。
だとするなら――――。
「……ヴァニタス、このまま逃げ回ってどうなるんだ? いい加減諦めろ」
思考を巡らす僕にモーリッツが温和な口調を装い話し掛けてくる。
この後に及んで降伏勧告か気持ち悪いな。
その割に
動揺狙いか?
「お前だってこのまま戦って勝てるとは思っていないんだろ? 月食竜エクリプスドラゴン、こいつは
「…………」
「ここからなら皇女とお前の奴隷の
「くっ…………」
邪竜の攻撃の余波、弾き飛んだ岩の破片が僕の体を傷つける。
「お前の奴隷とエリメスだが……何であんな奴隷を連れてきたんだ? 可哀想にエリメスの『虹帯』の魔法で終始翻弄されている。明らかにこの場にいるのにはあの奴隷は相応しくないな。あれじゃあ決着が着くのも時間の問題だ」
「…………」
額の血が目に入る。
視界が赤く染まる中、僕は必死で足を動かす。
直ぐ側で
「ヴァニタス……お前さえ大人しく死んでくれるなら皇女とお前の奴隷ぐらいなら生かしてやってもいい。本当はこんな独断での判断は不味いんだがな。オレも幹部の一人だ。結社には上手く誤魔化しておく。……どうだ? お前の命一つで二人も見逃してやろうっていうんだ。悪い話じゃないだろう?」
……嘘だな。
僕を始末したとしても二人を殺すことに変わりない。
それにこの件の目撃者だろう生き残ったグラニフ砦の騎士たちもモーリッツは容赦なく殺すだろう。
所詮口だけの男。
約束など守る気などない。
「オイオイ、ヴァニタス……すっかり傷だらけじゃないか、
「黙れ」
危険はあるが少し攻めるか。
僕は邪竜の振り下ろした前足を強化した身体能力で駆け上がる。
「チッ、ここま登って来るつもりか。そう簡単にはいかねぇよ。エクリプスドラゴン、振り払え!」
モーリッツの対応は早い。
すぐさま僕を振り落とすべく
だが……。
「
「おっ、何!?」
それも動かそうとする体自体に力が入らなければ意味がない。
動き出した邪竜の前足に当てるのは虚無魔法の衝撃。
これでヤツの前足の動きを鈍らせ時間を稼ぐ。
「なんだ? どうした、エクリプスドラゴン! 早く振り払え!」
「
「この、クソっ、大百足球体!」
「――――
手応えはあった。
モーリッツの体に球体に巻き付き防御を固めていた百足たちの大半を消し飛ばした。
しかし……。
「ハッ、たった一発。この程度なんともねぇよ! ――――大百足進軍!!」
効いてはいる。
弾け飛んだ服の隙間、左肩から赤い血を流すモーリッツ。
だが即座に反撃に出る。
僕へと
「
「くっ、またか!? 何だ、何故勢いがなくなる!?」
虚無の弾丸。
この魔法もまた命中した相手の動く力を無くさせる。
無事僕は
だが勝機というものを一つ失ったのも確か。
モーリッツは一連の結果に満足してはいないものの、勝機を失った僕へと嘲笑を向ける。
「ハハ、ハハハッ……残念だったなヴァニタス。お前の決死の攻撃も通用しなかった。いまのが唯一お前が勝つチャンスだったのになぁ。所詮お前はそこまでだったということだ。ハハ、ハハハハハハッ、もう終わりだ! 終わりなんだよ、ヴァニタス!」
何処か不安を拭い去るように高笑いするモーリッツ。
だが……もうそろそろいいか。
「終わってなどいないさ」
「な、に?」
「時間稼ぎもそろそろいい頃合いだ」
「時間……稼ぎだと? 何言ってやがる。言うに事欠いて時間稼ぎ? お前が追い詰められていたんだぞ! お前が死の間際まで追い詰められ圧倒的な劣勢に陥っていたんだ! 何をいまさら……。強がりもほどほどにするんだな!」
「待っていたんだ」
「待つ、だと? 誰を……誰を待つってんだ! ここにお前への助けなど来ない! あの奴隷も皇女も! 騎士たちだって虫の息だ! 誰もお前を助けになど来れない!」
「いるさ」
「何の根拠があってそう自信満々に言える! よく見ろ! エクリプスドラゴンは地形すら変える! 封印の森? 森の面影すらもうここにはない! あるのは果てしなく踏み荒らされた荒野だけだ! この魔物は災害だ! 災害にちっぽけな人間一人で勝てる訳がない! ましてやこの惨状を見て挑んでくるヤツなんて
いる。
僕にはいる。
彼女は僕の大切な存在。
彼女なら必ず僕の元へと駆けつけてくれる。
そう僕は心から信じている。
「――――主様っ!!」
「クリスティナ……」
「奴隷……だと? この場面でたった一人の奴隷が何の役に立つっていうんだ」
モーリッツ、お前にはわからないだろうな。
人を捨て駒のように利用してきたお前には奴隷の彼女を信じる僕は
「クリスティナ……よく来てくれた」
「はい……主様がいるところが私の目指すべき場所ですから……」
「ああ、信じていたよ。君ならこの
僕はクリスティナにある指示を出す。
それは
ここから僕たちは反撃に出る。
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