第7話 丘の上で
2人は丘の頂上の広場までやってきた。ここからは村が
「おぉ、良い眺め」
ケンが村の方角を眺め、短い感想を述べる。
私は少しホッとした、ガッカリされるかもと不安があったのだ。
「村の中心にある大きな建物が集会場」
私はここから見える村を指さし、説明を始めた。
指をさした方にケンが目線を向けるのを確認し、説明を続ける。
「あっちの北側……あっ、入り口のあるほうね。あの建物が村長の家。こちら側から見えないけど、馬小屋もあるよ」
北側は村長の家の他には畑くらいしかない、やはりこの村には何もないと感じる。
「あっちの南側は大体民家だよ。あっ、あそこの端にあるのがケンの家。
あとはケンの家から集会場方面に行ったところに私の家があるよ」
やはり説明するものがない。
南側は森に面しているので、申し訳程度の柵と
「集会場の近くにある露店みたいなのは何売っているの?」
「あそこは、街から仕入れたものを売っているよ。食材とか生活用品とか。置いてない物でも街にある物なら言えば替わりに買って来てもらえるよ」
「へー、そうなのか」
ケンは面白そうなものがないか、村から森まで見渡す様に顔を動かしている。
私はもう説明するものがなく、手持ち無沙汰だ。
「やっぱり森は広いね」
「うん、広いよね。森の方が気になる?」
「うん、この村に来たのも父さんが森の調査をするためだしね」
「調査? 何を調べるの?」
「この森に魔物がいないか調べるんだって。
他にもどんな動物が住んでるか、どんな植物が生えているとかも調べるみたい」
私は聞き慣れない単語が出てきたので思わず聞き返した。
「魔物……?動物とどう違うの?」
「あー、俺も詳しくは知らないんだけど、教会が魔物って決めた動物が魔物って言うみたい」
「うーん、なるほどー」
分かった様な分からない様な感じなので、間延びした返事を返してしまった。
「人間を襲ったりする危険な動物を分類するような感じかな」
ケンが補足をしてくれる。
「なるほど。でもそんな人間襲うような動物いるのかな?」
森は広いし探せばいるかもしれないが、私が生まれてからはそんな話は一度として聞いたことがない。
「それをいるか確かめるのも調査の内だろうしね」
「うーん、そんなものなの?」
「俺も付いて来ただけだし、実際はよく分かってないんだけどね」
ケンは少し戯けたように言った。
前の移住先ではどんなことをしていただの、色々話を聞いているうちに時間が経っていた。
「そろそろ帰る? あまり遅くなると母さんに怒られるし」
「もう怒られるのは確定しているんじゃないの?」
「あっ、そうだった!!」
ケンは大袈裟な仕草で頭を抱えた。
私がそれを見て笑うとケンも一緒に笑った。
お互いが笑い合ったのが嬉しくて、私はさらに笑い声をあげた。
ようやくケンと打ち解けた気がして嬉しかった。
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