第6話 おすすめの場所

「案内すると言ってもたいした物はないよ」

と私は予防線をはっておく。

でないとケンのキラキラした期待に満ちた目に耐えられそうにない。

「それなら、オススメの場所とかない?」

無茶を言う、たいした物がないと言った後なのに。。。

でも、あそこなら。。。

「気に入って貰えるか分からないけど良い場所知ってるかも」

「えっ、本当!!そこに行こう!!」

ケンは本当に良い反応をする。

そんな期待されたら不安になるじゃないか!!


村の東側にケンを案内することに決めた。

村から出た場所になるのだが、ここには小高い丘があるのだ。

ギリギリ山とは言えないくらいの場所で、気軽に行くには面倒くさい場所である。

「あっち側に丘が見えるのわかる?」

「うん」

「あそこなら村を一望出来るし、森も見える場所もあるよ」

「そこ良いね!!」

「結構距離あるし大変だけど。。。大丈夫?」

「あのくらいなら大丈夫だよ。

 でも、飲み物はあった方が良いかも」

と言いケンは少し困った顔でこちらを見た。

「私の家が近くだから、水筒持っていこう。」

ケンは家に戻ると怒られるので、私の提案にホッした顔を見せた。


私の家に寄って水筒と干し肉を持ち出した。

干し肉はケンがいることをみた母が持たせてくれたのだ。

今日は天気が良く涼しい風が吹いている、出歩くには丁度良い気候だ。

「ケンはどの辺から来たの?」

「セントレアからだよ」

「それってあの中央の大陸の?」

「そうだよ」

「すごい!!近くの街までしか行ったことないから、羨ましいな」

「別にすごくないよ」

「セントレアってどんなところ?」

私は今まで触れることのなかった外の世界に興味が湧いてきた。

「うーん、そうだな。一言ひとことで言うと都会かな」

「都会」

良い響きだ、憧れる!!

「そう、お店も沢山あるし本屋もあるよ」

「本当に?本が沢山あるの?」

本は高価でこの村で持っているのは村長くらいのものだ。

近くの街でさえ本専門で売っている店はない、この辺で手に入れようとすると行商人から買う他ない。

「天井近くまである、棚に並んでいるよ」

ケンが得意げな顔で答える。

「他には!!?他にはどんなお店があるの?」

「そうだなー、服屋も沢山あるしアクセサリーを専門で売っているところもあるよ、あとは市場いちばの方に行くと新鮮な魚や果物とかも売ってるよ」

「いいなー、アクセサリーどんなのあるんだろー」

アクセサリーは女の子にとって憧れだ。シャリーは見たことのないアクセサリー屋に思いをはせた。


丘の中腹まで来たところで一旦休憩を挟んだ。

良さげな石に座り、水筒と干し肉を出した。

お茶をコップにつぎ、干し肉と一緒にケンに手渡した。

「ありがとう」

ケンのお礼に「どういたしまして」と答えた。

天気の良い空に雲が流れる。心地の良い風が頬を撫でる。

2人は黙ってこの心地よい雰囲気に身を任せる。


「さあ、そろそろ行こう」

干し肉を食べ終わり、お茶を飲み干したケンが言った。

ケンは干し肉に夢中になっていたから静かだっただけの様だ。

私は食べかけの干し肉を口に放り込み、立ち上がった。

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