第4話 カラトリ村到着
ようやく、ようやくだ!!
ようやく目的地のなんとか村が見えてきた!!
道中何回も村の名前を聞いたが、いまだに覚えていない。
オタリア大陸到着後三日で村へ着くと聞かされていたが、五日かかってしまった。
トーリンズ川の北側の街道は整備されており、宿場も何箇所かあった。普通であれば苦労する要素などなかったのだが……
不幸にも乗っていた馬車がぬかるみに
後少しというところでもたついたので余計に苦労をしたという思いがある。
村の入り口には十人程度の人が集まっていた。歓迎ムードだ。
村の規模からして、これで全員と言う訳ではないだろう。しかし昼間からこれだけの人数が集まっているところをみると歓迎されている雰囲気を感じる。
俺は村の様子を観察する様に周囲を見渡した。
見える範囲では一件だけ大きな建物が建っており、あとは民家らしい家が建っている。
どれも木材で作られており、塗装なども綺麗で丈夫そうな作りをしている。
道は草など生えていないが舗装されている訳でなく、少しでこぼこしている感じだ。
村の観察を終えると、俺は同年代の子を探した。
何度か移住をして分かったのだが、同年代の友達がいるかどうかで楽しさが全然違うのだ。
大人の影に隠れてこちらを覗き見ている女の子を発見した。
年は十才くらいかな。小柄で小動物の様な雰囲気を感じる子だ。
肩にかかるくらいの濃いめの茶色い髪が所々外に跳ねている。くせっ毛の様だ。
丸顔で大きい目がクリクリしていて、余計に小動物の様に感じれる。
俺がその子に話しかけようとした。
しかしその時初老の男性が挨拶をした。
「ようこそカラトリ村へ、まずは家の方に案内いたします」
タイミングを外され俺は話しかける事が出来なかった。
家へ案内される道中で挨拶をした初老の男性が村長だと分かった。
その後の話は「この村に学者先生が訪れてくれるなんて」とか「どんどん若いのが減って」等のおべっかや世間話だったので全然興味が持てなかった。
これから住むことになる家は他の建物と同じく木造で丈夫そうだ。
二階建になっており、三人で住むには十分な広さがあることがうかがえる。
「では、本日はごゆっくりなさってください。
明日に村の案内と歓迎の宴を用意しておりますので」
「ありがとうございます。楽しみにしています」
移住した先でこういった歓迎のされ方はよくある。父さんはそれを断らない。その方が今後の関係が円滑に進むそうだ。
俺はそんなやりとりを尻目に家周辺を見回していた。
ふと茂みの方から視線を感じる。
村の入り口で見つけた女の子がこちらを覗き込んでいる。
向こうもこちらが気になっていたのかな? なんにせよ丁度良い。仲良くなる機会だ。
話しかけるべく茂みに向かおうとすると。
「ケン坊早く中に入るぞ、荷解きもあるんだからな」
「その呼び方やめてって毎回言っているだろ」
たまに父さんが使う呼び名に抗議しながら家に入る。
またタイミングを逃してしまった。
すぐに荷物を部屋に押し込み探しに行こう。
一階は台所、風呂、トイレ、ダイニング、それと一室ある。ここは父さんの書斎となる予定だ。
二階は三部屋あり、父母の寝室、俺の寝室、物置になる。
「母さん、俺のトランクどこー」
「階段の下においてあるよ、自分の部屋に持ってきな。それと母さんと、父さんの分も頼んだよ。
あと備え付けの家具が置いてあるって話だから、荷物はちゃんとしまっときな」
「はーい」
と返事したものの、階段下にある荷物は中々多い。
持てるだけ持ち二階に上がる。
階段を上がった場所にある窓から外を見ると、まだ茂みに少女がいるのが見えた。
まだ間に合うかも。
残りの荷物を大急ぎで二階に運び、荷物を部屋に放り込んで玄関から飛び出した。
少女がまだいることは窓から確認済みだ。
茂みの方に向け手を振る。
やがて少女が出てきた。その少女に向けて俺は初めての挨拶をした。
「こんにちは、俺はケンよろしくな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます