【五大陸】外海からの来訪者
@syu_dd
第1話 出会い
—— 「何か面白いことないかな」と少女は呟く。その呟きは誰に聞かれるでもなく風に乗り遠くに運ばれていく。
その日、片田舎の村に小さな変化が起こった。
学者の一家が引っ越してくるというのだ。
その一家を迎えるべく村の人達は村の入り口に集まっている。
「村の人口は減ることはあれ、増えるのはいつぶりだ」、「学者がこんな村になんの用だ」と大人達は話している。
私もそんな人だかりの端でワクワクしながら到着を今か今かと待ち望んでいる。
遠くにこっちに向かってくる一団が見えた。
学者一家と船着場に迎えに行った大人達だ。
私は一家を迎えるべく駆け出した。
「ようこそカラトリ村へ、まずは家の方に案内します」
村長が学者一家に向けて挨拶をした。
私も「ようこそ」と歓迎の挨拶をしたかったが出来なかった。
家で挨拶のイメージトレーニングは沢山したが、大人がいるし仕方ないと自分に言い聞かせ学者一家の方を覗き見る。
学者の一家は三人家族だった。
私と同い年くらいの少年、黒の短い髪、身長は私より少し高いくらい。好奇心旺盛なのかキョロキョロとあたりを見回している。
父親は大人の男の人は背が高く痩せていて、ヒョロっとしている。いかにも学者な風貌だ。髪色は少年と同じ黒髪で短髪で撫でつけられており、神経質そうに見える。
そして母親は
この一家は村はずれの
一通りの歓迎が済んで村長が家まで案内を始めたので、私はこっそり後をつけることにした。
少年たちが住む家は少し前から
穴は塞がれ屋根、壁ともに新たに塗装されている。とてもあの荒屋と同じものとは思えない出来である。
しかし中はどうかな? 村の大人たちが中まで気にするとは思えない。
どうせ外観だけ取り繕っているのだろうと私は考えている。
少年たちが家の中に入ってしまったため、私はこの後どうしようかと悩んだ。
少年と話をしてみたいが、家を尋ねることはしたくない。
別に勇気がないとかではない。いきなり見知らぬ人が家を訪ねるのは失礼だと思えるからやらないだけである。
あの少年は好奇心旺盛そうだし、すぐにでも家を出てくるのではないか。という考えに至る。
もう少し待ってみよう。きっと出てくるはずだ。
私は地面に絵を描きながらもう少し待ってみることにした。
地面に絵を描くことに飽きてきた頃、待ち望んだ少年が家の戸を開けて出てきた。
少年はあたりを見回した後にこちらを見据え手を振ってきた。
茂みで私の姿が見えないはずなのだが、明らかにこちらを見ている。
一瞬
「こんにちは、俺はケンよろしくな」
元気よくケンと名乗る少年が元気に挨拶をしてきた。
「シャリー……よろしく……」
何度も練習したかいなく、顔を伏せて蚊の鳴く様な声で挨拶を返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます