勇者封魔伝ハウルガイザー
夏川冬道
第1話
勇者封魔伝ハウルガイザー
聖女サリアは現在進行系で悩みがあった。
「サリア! 見て見て! カエル捕まえたよ!」
「放してあげなさい」
それはパーティメンバーの勇者、ユーリが自由奔放に行動することだった。
サリアは復活した魔王を封印するために召喚した勇者とともに旅をすることになっていた。しかし、ユーリは幼い女の子にしか見えなかったのだ。
サリアは聖女として勇者をサポートする役目があった。だが実際はユーリの行動に振り回されている一方だった。
「ユーリ殿、サリア殿がカエルを怖がってるから遠ざけた方がいいぞ」
パーティメンバーの戦士アーデンはユーリをたしなめた。するとユーリは名残惜しそうにカエルを野に離した。ユーリの扱いはアーデンのほうが上手のようだ。サリアはもう一人のパーティメンバーの魔法使いレミィに視線を合わせた。レミィは苦笑いした。
◆◆◆◆◆
「サリア殿……ユーリ殿は勇者とはいえ子供……少しぐらいは大目に見てはいかがかな」
「……そうかしれませんが、ユーリにはもっと勇者としての自覚を持ってほしいです」
夕方、宿屋のバーでユーリ以外のメンバーとお喋りしていた。
「サリアは気にし過ぎだよ」
「やはりそうなのでしょうか……」
レミィの言葉にサリアは少し意気消沈した。
サリアは聖女として勇者の使命をサポートしたいが勇者が子供ではなかなかうまく行かないものだ。
「大変だ!魔族が攻め込んできたぞ!」
悩めるサリアをよそに血相を変えた村人がバーに飛び込んできた!
「こんな時に魔族が攻め込んでくるとは!サリア殿は ユーリ殿を起こしに行ってほしいですぞ!それまでは我々が食い止めます!」
アーデンとレミィは宿屋の外に飛び出していった!
サリアはも急いでユーリの泊まる部屋に飛び込むとユーリは外の騒ぎで目を覚ましていた。
「ユーリ、魔族が襲撃してきました。外に出て迎え撃ちますよ」
サリアに促されユーリは外に飛び出した!
「アヒャヒャヒャ!勇者がここにいることを俺たちは知っているんだ、早く勇者を出せ!」
「ウワーッ! 勇者なんて知りません!」
勇者の噂を聞きつけた魔族が村を襲っていた!
「なんて酷いことを!」
ユーリは魔族の蛮行に怒り心頭だ!
「サリア、魔族をやっつけなくちゃ!」
「ユーリ、この村に平安を取り戻しましょう」
ユーリとサリアは魔族を退治するために飛び出していった!
一方、村人を守るために一足先に外に飛び出したアーデンとレミィは魔族と戦っていた!
「エナジー・ボルト!」
レミィの放った電撃弾が魔族を焼いた!
「レミィ殿、魔族はどこから勇者が来ることを知ったのでしょうな」
アーデンは魔族をのしながらレミィに尋ねた。
「そんなこと知らないわよ」
レミィが返答すると強そうな魔族が邪悪なオーラをまとわせながら降り立った!
「勇者一行め……おっとり刀で駆けつけたか!しかし、このラセツ様の力の敵ではないわ!」
「上級魔族!」
上級魔族、ラセツは不敵な表情でアーデンとレミィを見下ろした!
「魔界に帰ったほうが身のためですぞ!」
アーデンはラセツに警告する!
「人間風情が俺に警告するとは生意気だぞ!返り討ちにしてやる」
ラセツは手をかざすと破壊光線をアーデンに発射した! アーデンは回避した!
「どうだ……怖いか!これが上位魔族の力だ!」
「ファイヤ・アロー!」
レミィは火炎弾を飛ばしラセツを牽制した!しかし、ラセツはバリアを張ると火炎弾を受け止めた!
「勇者パーティーの実力はこんなものか」
ラセツは吐き捨てるように言うと破壊光線を二人に向けて連射した!急いでレミィとアーデンは回避した。
「ククク……何度破壊光線を避けられるか見ものだな」
ラセツは嘲笑した!
一方、サリアとユーリはアーデンとレミィのもとに駆けつけるために走っていたが下級魔族が邪魔だ!
「行かせないぜ……聖女様」
「貴様らを倒して魔王陛下にお褒めの言葉を頂くんだ!」
下級魔族はジワリジワリとサリアとユーリに近づいてくる!
「ユーリには指一本触れさせません! ホーリーブレイズ!」
サリアは聖なる炎で下級魔族の群れを焼き払った! しかし、次の下級魔族の群れが迫ってきた!
「サリア! このままだとジリ貧になっちゃう!」
「急いでアーデンとレミィに向かいましょう!」
しかし、サリアのMPは少しずつ現象していった!
「助けて! フェンリルーン!」
ユーリはそう叫ぶと首から下げたホイッスルを吹いた!
ワオーン! どこからともなく遠吠えが聞こえると狼型のロボットが飛び出してきた! 彼の名前はフェンリルーン。ユーリの友にして守護者である狼型ロボットだ!
「フェンリルーン!アーデンとレミィのところに連れてって!」
ユーリとサリアはフェンリルーンに跨がるとアーデンとレミィのところめがけて一気に駆け出していった!
「そろそろ破壊光線を回避するのも疲れてくる頃だ!踊れ踊れ!」
ラセツはなお破壊光線を発射しアーデンとレミィに反撃させないでいた!
「こんな時にユーリ殿とサリア殿がいてくれたら!」
アーデンはユーリとサリアの不在を嘆く!
「泣き言を言おうが貴様らは終わりだ!死ね!」
トドメとばかりに強力な破壊光線を放った! これでおしまいなのか!
「ワオーン!」
戦場にフェンリルーンの遠吠えが鳴り響いた!
「ユーリ殿!駆けつけてくれたのですな!」
「相手は上級魔族よ……勇者の力を見せつけてやりなさい」
アーデンとレミィは安堵の表情を見せた!
「ククク……貴様を倒して魔王様に褒美をたんまりともらうぜ!」
ラセツは邪悪な笑顔でユーリを見た!
「これが上級魔族……なんて邪悪な魔力なの」
サリアは上級魔族のオーラに慄いた!
「上級魔族め! 村人を恐怖のどん底に突き落とした報いを受けてもらうよ!」
「アオーン!」
ユーリはフェンリルーンに搭載された勇者の剣を構えた!
「勇者よ、貴様の旅はここまでだ! 死ね!」
ラセツは破壊光線を放った!
「ディバインバリア!」
サリアはすかさず聖なるバリアを張った!ユーリを狙った破壊光線はバリアに阻まれた!
「ぐぬぬ」
聖女の妨害に唸り声を上げるラセツ!
「今度は私の番だ!」
ユーリは勇者の剣でラセツに斬りつけた!
ラセツは顔をしかめる!少なくないダメージだ!
「……なかなかやるようだな。しかしこの攻撃はどうだ?」
ラセツは指先に魔力を込めると暗黒の魔法弾を放った!
「ディバインバリア……ウワーッ!」
ユーリを守るためにサリアは聖なるバリアを張ろうとしたが突如苦しみだした!
「サリアに何をしたの!」
「ククク……この魔力弾には呪いが込められている。これで聖女様はバリアを張れないな」
「なんて卑怯なやつだ!」
怒りに震える勇者パーティ!
「この戦士アーデン、怒りの一撃を受けてみろ!」
アーデンの握る剣が輝き、ラセツに斬撃を放った!
「この程度か……踏み込みが甘い!」
ラセツはカウンターパンチをアーデンにぶつけた!これは痛い!
「アーデンさん!」
ユーリは思わず叫んだ!
「勇者よ……これが上級魔族の力だ! 恐ろしいと言え!」
ラセツは不気味な笑い声を上げた!
「ユーリ、恐れてはダメよ!」
そこにレミィの声が響いた!
「レミィ!」
「あいつの呪いの力は恐れに根ざしたもの……恐怖心が呪いを増幅するわ!」
「なんだって!」
レミィの解説にユーリは驚愕した!
「よくぞ俺の呪いの秘密に気づいた……しかし、俺が有利だということは変わらん!」
ユーリに向けて魔力弾を放つラセツ!しかし、アーデンが体を張って魔力弾を受け止めた!
「この程度の攻撃、屁でもないですぞ!」
ノーダメージだ!
「体を張って勇者を護るとは……しかし、あと何発耐えられるかな!?」
ラセツは指先に魔力を込め始める!これは危ない!
そこにラセツの後方から素早く近づき噛みつき攻撃をしたかげがあった!フェンリルーンだ!
「グワーッ!」
ラセツは悶絶した!
「フェンリルーン!助けてくれたんだね!」
ユーリはフェンリルーンの手助けに微笑んだ!
「守護騎獣め! 味な真似をしやがって!」
ラセツは怒りに打ち震えた!
「エナジー・ボルト!」
レミィはその隙を逃さず電撃弾を放つ! 完全な不意打ちでラセツは避けられなかった!
アーデンとユーリは急いでサリアのもとに駆け寄った!
「サリア! 大丈夫!?」
「……ユーリ、呪いに関しては大丈夫、ディスペルをかけて徐々に回復しつつあるわ」
「顔が青ざめているよ!」
「……少し休んでいれば大丈夫よ」
「サリア殿、やせ我慢はいけませんぞ!」
ユーリとアーデンの優しさにサリアは涙した。
「そんなことより早く上級魔族を倒さないと」
サリアの言葉でユーリはハッとした!
ラセツが勇者に接近しつつあったからだ!
「ククク……勇者と聖女ともども死んでもらおうか!」
その前に立ちふさがるアーデン! 時間稼ぎのつもりか!
「そうはさせない!エナジー・ボルト!」
レミィはラセツの気を逸らすために電撃弾を飛ばす!しかし、同じ手には引っかからないとノールックで魔力弾を撃ち電撃弾を相殺した!
ユーリは勇者の剣を力強く握った!
「上級魔族め! これ以上ユーリの仲間を傷つけさせないぞ!」
ユーリの言葉に応えるかのように勇者の剣が光り輝いた!
「ノーブル・ブライト・ブレイブ・スラッシュ!」
ユーリの勇気が勇者の剣のパワーを増大させた斬撃は一筋の光線と化してラセツを貫いた!
「うごごごご……このラセツ様が敗れるとは!無念!」
ラセツは断末魔の叫びを上げると爆発四散した!
ユーリは勇者の必殺剣を放った反動で地面に尻餅をついた!
「上級魔族がユーリの一撃で倒れた」
サリアの肉体を蝕む呪術が一気に引いていく感覚を覚えた!
「ユーリ殿! やりましたな!」
アーデンとレミィはユーリに駆け寄った!
「上級魔族を倒したら力が抜けちゃった」
「アーデンはサリアを宿屋に運んで……ユーリは私が宿屋に運ぶから」
斑を突如襲った恐怖の一夜はこうして幕を閉じたのであった!
◆◆◆◆◆
魔王城。禍々しい大広間に大量の上級魔族が集まっていた!
「ラセツがやられたか……」
「功を焦った小物の末路……哀れなり」
上級魔族は仲間の死に殆ど動じない。恐ろしき実力社会だ!
「……次は誰が出撃する?」
その言葉に上級魔族が我先に手を挙げる!収拾がつかない!
その様子を玉座に座り静かに眺めるのは魔王デモンシュタインだ!
「ククク……勇者よ。なかなかの実力者のようだな。しかし、最後に笑うのはこのデモンシュタインだ」
不敵な笑みを浮かべるとデモンシュタインは静かにワイングラスに注がれた酒を飲み干すのだった。
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