丈二編
第9話 新しい世界
―――ロームス王国の南方フィルム近郊
箱庭の試練と女神オプスとの謁見を終えた丈二と旅の愛狼サニーは草原に立っていた。
女神の云うとおりそこに川が流れている。
「川がある…。」
ちょっと箱庭で川が恋しかったので、何となく嬉しい。溜まらず川に近寄り水を口に運ぶ。
日本では見たことがない透き通った水だなと飲んだ後に思う。
側らでサニーも水を飲んでいる。
「ここが俺の世界じゃない世界なんだなぁ。本当に漫画のようだ。広大な自然の中に川と道だけが伸びている。」
気持ちいいくらいの広大な草原が広がり、川が流れ、平行して少し離れた場所に道があり地平線まで伸びている。
《ようこそ。こちらの世界にですね。ご主人様、来て早々ですが如何いたしましょうか?》
サニーがちょこんと隣に座り訊く。
「そうだな。まずは色々と事項を整理しようか。」
丈二は、まず暗闇の空間に飛ばされ無限とも思える時間を彷徨い、着いた光の先「箱庭」で試練を受ける。その後この世界の女神に謁見し今に至る。その課程で出会った二人の女神から云われたことを整理するとこうだ。一部女神の言葉から要約する。
※ ※ ※
1 ここは、元の世界と繋がった異世界でマナと呼ばれる力で文明が栄えている
2 丈二は現世に戻る条件が不足 条件を満たせば帰還可能
3 こちらの世界を生き抜くため女神から権能を与えられている
① 万科辞典という名の権能で欲しい情報が分かる
② アプリを模してスマホに入っている(充電はマナを可能)
③ 情報は、文献や定説となっている情報に限って見ることができる
④ 元の世界の情報は、その情報を提供をする協力者が必要
⑤ 協力要請ができるものは1名のみ
4 箱庭での所持品は持っている
5 この大陸には5つの国があり、今居る場所はロームス王国の南方
6 フィルムの街が10km程先にある
7 元の世界と成長の概念が違う レベル等の概念があり鍛えれば強くなれる
8 サニーは、丈二の眷属のため彼の力に比例している
※ ※ ※
「って感じであってるのかな?帰る条件を探すって最終目的はあるが、短期的な目的がないんだよなぁ。『明確な目的があれば、起伏の多い道でも前進できる。目的がないと、平坦な道でも前進できない。』ともいうし。」
注文票のメモ帳に情報をまとめた内容を眺め考える。
「取りあえず、7を把握しておかないとだな。街に着くまでに死んでもつまらん。。3については、その後使ってみればいい。すみませんが、サニーさん教えてもらってもいいですか?」
もふもふなサニーの頭を撫でながら丈二は頼む。
《そうですね。では、7のこの世界の成長概念からご説明しましょうか。》
「おお!レベル!成長!ファンタジーだねぇ。流石に上がるわぁ。」
人並みにゲームはしてきた。ここまで色々あったが、今が旅の始まりだと思うと買ったばかりのRPGをワクワクしながら電源を入れる高揚感を覚える。
《それでは、まず、ご主人様の世界では…。例えば運動を継続すれば体力が上がり、技量等も努力の継続による能力向上が見込めますよね。》
「う~ん。一概に言えないだろうが…そうですね。」
《この世界では、能力は一定量の経験を積上げて初めて質が向上します。》
《厳密には上がっている場合もあるのですが、ご主人様の世界と比べて上がり方が極めて小さく、逆に一定量の経験を経て上がった能力は、はっきりと体感できます。》
《原理としては、この世界の全ての源がマナによるものであり、経験を積むことでそれが蓄積されます。一定の量を得ることで体になじむ瞬間が来ます。それが向上するタイミングとなるのですが、ご主人様の世界でいうゲーム等のレベル概念と似ているため、ゲスト…迷い人の皆様にはレベルとして示しています。オプス様は仰ったのはこのことです。》
「ん?迷い人?」
《私たち神格はご主人様の世界から来た方をゲストと呼び、こちらの世界の方は迷い人と呼んでいます。》
「あぁ成程です。すいません腰を折りました。続けてください。」
《いえいえ。では続けます。そのレベルアップで向上する項目…ご主人様の世界でいうステータスは、こちらの世界では能力値と言っています。》
《能力値は、その者の先天的な能力がベースとなり、レベルにより格上げされます。各能力値の種類は、影響を与える事項と合わせ、まとめるとこうなります。》
サニーは、丈二のメモ帳を借り、ペンを口で咥えて起用に以下のとおりまとめる。
※ ※ ※
[能力値]
体力値 …生命の量、なくなれば死んでしまう
魔力量 …魔法や技術に必要なマナを貯めて置ける量
力強さ …攻撃力に影響、鍛冶職の場合は叩ける金属高度に影響、持てる武器や
道具の重さ等に影響
器用さ …精密な作業や弓等の命中に影響
素早さ …体のキレやスピード、回避に影響
賢 さ …理解力、マナを使った技術の取り扱い・取得・威力等に影響
魔 力 …マナによる魔法等への耐性、魔力量、魔力の回復量に影響
※ ※ ※
《基本はこの様な感じとなります。また、レベルアップ時の能力値の上がり方は職業に依存され変わってきます。例えば、剣職なら力強さや器用さ、魔法職なら賢さや魔力と魔力量、料理人なら器用さと賢さが上がりやすい傾向があります。》
《こちらでの成人である15歳を向かえた者は職を得ることができます。どの職業を営むかは自由ですが、街にある神殿で「先天的な基礎能力値」から、それに合った職業を紹介してもらうことが可能で、大半の方は適正職を把握し職を得て能力を伸ばし生計を立てることが多いです。》
「へぇ~。なんとなく向こうで遊んでいたゲームに近いので理解しやすいです。しかし、生まれ持っての適正を自分の職業に生かせるのは羨ましい。」
箱庭ではないが、都合のいいところはゲームのようだなと苦笑いする。
《えぇっと…ここまでは、ご主人様がワクワクされていましたので、概念を先にお伝えしたのですが…。》
サニーが少しばつの悪そうな声で言う。
《…多分。能力値を直ぐに確認する流れを期待されてますよね?》
「え?そうですね。…と言いますと?」
《実は、ご主人様の場合…今それを見ることができないのです。あの…申しにくいのですが…本来なら箱庭で…。》
「本来なら箱庭で?」
《箱庭はこちらの世界のチュートリアルのような場所です。…本来なら卒業時に、ケレース様から説明があり見れるようになるのですが…眷属契約で有耶無耶にして、黙っていたほうが…面白…い…と。》
「あっ!!あああああああ!」
⦅ケレース:あ?いいんすよ。ジョジさんにはメインイベントを早く体験していただいたほうが良いと思うっす。⦆
⦅ケレース:実はまだあるっすけど聞きますか?丈二:…もういいです。勘弁してください。⦆
「あ…うっ。あの糞堕女神。。。あれはこれかああああ。くそ。」
本当に、怒鳴りたい気分になったが、何処かで見ている気がして気力を失う。
「これどうすればいいですか?俺は今後自分の能力がわからずに、この世界で生きるのでしょうか?」
割とマジで死活問題じゃねこれ?と涙目でサニーに聞く。
《正直に言いますと、私の能力から概ね想像は出来ます。ですが、まずは自分で確認されたいですよね?それなら街に行き所定の手続きをすれば、職を選べその段階で確認が出来るようになります。》
「…そうですね。どの道しっかり確認すべき事ですから、そうさせていただきます…。」
《それに…ゲストの方には、まずは、能力に慣れていただくために箱庭で狩りをして頂いた後にオプス様に謁見していただくのが習わしなのですが…それも…。》
「あぁ…さいですか。狩りってことは適切な武器とかも、きっとその時に貰えるんでしょうね。えぇえぇ…わかります…わかりますとも。」
《すみません…私にはその権能がございませんので…。》
「取り合えず短期的な目的が…諮られた感が否めないけど。街に行って就職します。僕…。」
《本当にすみません…。》
この現状を作った堕女神が(当然のように)この状況を覗き見して笑い転げているのは、言うまでもなかった…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。