第16話 頭に「た」のつく映画といえば?

「時は金なり」なんて言いますけど。


 子供の頃、ミヒャエル・エンデの児童文学『モモ』を読んで、謎の男たちに「時間」を売ってしまう大人たちが、何だか怖く、そして不気味に思えたものですが、今回紹介する作品は、時間がお金になる話。

 自分の「残り寿命」が「通貨」として使える世界。


 頭に「た」のつく映画、「TIME/タイム」を紹介します。


 原題は「IN TIME」。


 2011年のアメリカ映画。監督・脚本はアンドリュー・ニコル、出演はジャスティン・ティンバーレイク、アマンダ・サイフリッド、キリアン・マーフィー、オリヴィア・ワイルド、マット・ボマー、アレックス・ペティファー、ヴィンセント・カーシーザー、ジョニー・ガレッキほか。


 近未来の世界。


 科学技術の進歩により、肉体的な老化は完全に無くなりました。

 全ての人間の肉体的成長は、25歳でストップします。


 その代わり、25歳になった瞬間から、左腕の皮膚にはデジタル時計のような表示が光り、時間を刻み始めます。

 左腕の、この「ボディ・クロック」は、「余命時間」です。


 この社会の大きな特徴は、お金の代わりに、自分の寿命の“時間”を使うということ。


 コーヒー1杯が“4分”、電話を1回かけるだけで“1分”、という感じで、残り寿命から引かれるのです。


 限られた一部の“富裕ゾーン”の住人は、永遠の命を享受する一方で、圧倒的多数の“スラムゾーン”の人々は、余命23時間。


 スラムゾーンの人間が生き続けるためには、日々の重労働によって稼ぐしかありません。

 日雇い労働の「報酬」は、翌日も生きられる“1日”分の寿命時間。

 自動的に、毎日がサバイバルです。


 富裕ゾーンとスラムゾーン、2つの世界には“タイムゾーン”という境界線があり、互いの世界の行き来は禁じられていました。


 スラムゾーンに住む青年・ウィルは、母親と二人暮らし。

 日雇いの肉体労働で稼いでは、わずかな“寿命時間”を母と分け合って、なんとか生きています。

 ボディ・クロックが光る左腕同士で握手をすると、手持ちの寿命時間を他人と分け合えるのです。(その分、時間を奪う通り魔もいますが)


 ウィルは、富裕ゾーンからやって来た、人生に絶望した男・ハミルトンと知り合います。

 追いかけてきたマフィアからハミルトンを助けたことで、彼が持っていた「116年」という長い寿命時間を譲り受けました。

 その後「これ以上生きることが苦痛だ」と、ハミルトンは自殺。


 莫大な時間を持ったウィルは、母親に時間を分け与えようとしますが、残り寿命が僅かしか残っていなかった母は、目の前で時間切れ。死んでしまいます。


 ウィルは、この世界のシステムに怒りを覚え、タイムゾーンを超えて富裕ゾーンへ向かいます。


 そこで出会ったのは、変化のない日常生活に辟易していた、大富豪の娘・シルビア。

 そして、時間を監視する「時間監視局」の局員・レオンが、ハミルトン殺害の容疑でウィルを追跡してきます。


 レオンに追い詰められたウィルは、近くにいたシルビアを人質にとって逃走。

 ウィルの一方的な行動で始まった逃走劇でしたが、絶体絶命の危機を潜り抜ける中で、2人に恋心が芽生えます。

 逃避行の末、待ち受ける結末とは……?というSFアクションです。


 この作品で特筆すべき設定は「寿命時間=通貨」という点でしょう。


 時間の流れを監視する「時間監視局」や、時間を貯める装置を預けておく「時間銀行」など、発想がユニークです。


 スラムで暮らす層は一分一秒が惜しいので、移動するにも走りますし、とにかくせかせかと急いで行動します。バスに乗るにも「寿命」がかかるので、乗るか乗らないかで悩む時間が勿体ない。


 富裕層は、寿命に余裕があるのでのんびりとしているのですが、毎日することがなくて退屈し、ヒマをもてあましている……という、貧富格差がハッキリとした社会。


 いろいろ現実とのリンクに考えさせられてしまいます……。


 結局のところ、「時間」そのものが「金」ではないけれど、じゃあ「価値」あるものとして自分たちは扱っているだろうか? 

 無駄に浪費していないだろうか?


 そんな疑問を突き付けられるかのようです。


 あと、この作品タイトルと「日本語吹替」で検索すると、様々なところでネタになっているので、敢えて詳細は書きませんが……新規バージョン作って販売してくれませんかね?

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