第11話 頭に「さ」のつく映画といえば?

 タイムマシンを使って、時間を越えて過去に戻るSF映画というのは数多くありますが、これから紹介する作品は、キャッチコピーが


「タイムマシンのムダづかい。」


 で、ノリだけで二十回以上も「昨日」と「今日」という短時間の往復を繰り返す内容です。


 というわけで、頭に「さ」のつく映画、「サマータイムマシン・ブルース」を紹介します。


 2005年の邦画。監督は本広克行、出演は瑛太、上野樹里、与座嘉秋、川岡大次郎、ムロツヨシ、永野宗典、本多力、真木よう子、佐々木蔵之介ら。


 夏休みだというのに、大学の「SF研究会」のサークル部室に入り浸っては、SFとは全然関係ない、草野球やファミコンゲームに没頭する男子大学生たち。

 この「SF研」の部室は、人数の少ない写真部と部室を共有していて、所属している女子大生が暗室を使うために部室を利用するのですが、「SF研」とは名ばかりで、遊んでばかりの男の子たちに呆れています。


 夏の暑い日、草野球で汗を流した彼らは、近所の銭湯に行って全員で汗を流し、部室に戻りました。

 部室でのバカ騒ぎが原因で、ペットボトルのコーラが倒れ、エアコンを操作するリモコンにコーラがかかり、リモコンは故障してしまいます。

 エアコンは年代物で、このリモコンがなければ操作することはできず、SF研の顧問である先生に修理を依頼しましたが、直りそうにありません。


 猛暑のさなか、故障したクーラー……SF研のメンバーたちはぐったりしてしまいます。

 そんな中、部室の近くに、不思議な機械があるのに気づきました。誰かが置いていったガラクタだろう、と適当にスイッチをいじっているうちに、乗っている人間は機械と共に消えてしまいました。

 パニックに陥るメンバーの前で、しばらくしてから、機械と共に消えたメンバーが出現します。


 乗っていた彼らが言うには、どうやらこの機械は「本物のタイムマシン」であり、「過去に行ってきた」ようなのです。


 時間を超えることができるのだと分かり、浮かれた彼らは「どの時代に行くか」で議論した結果、「昨日」に行って、壊れる前のエアコンのリモコンを取ってくるのはどうだろう、という名案が浮かびました。


 こうして、タイムマシンを使って「昨日」に行った彼らですが、タイムトラベルに興奮するあまり、面白半分に「昨日」の世界でやりたい放題。


 一方、大学の部室には田村という人物が訪れていました。

 未来から、タイムマシンを使ってこの時代にやって来て、観光していたのですが、帰るためのタイムマシンが無くなっている、というのです。

 勝手に乗り回しているとは言えず、「今日」に残っている「SF研」メンバーは、時間稼ぎをします。


 話をするうちに、「『昨日』の世界に行って、壊れていないリモコンを『今日」に持ってきたとしたら、『昨日』コーラで壊れるリモコン自体が存在しなくなるんじゃないか?」という矛盾に気付きます。


 SF研の顧問に相談すると、それはいわゆるタイムパラドックスであり、過去を書き換えると、現代に繋がる時間の流れが狂い、「今」そのものが消えてなくなってしまうという結論になりました。

 つまり、『昨日』にリモコンを戻して、歴史通りに「コーラでリモコンが故障する」事実に帰結させないと、大変なことになる、と……。


 そんな中、『昨日』の世界で遊びまくっていたメンバーが、壊れていない『昨日』のリモコンを持って、『今日』に帰ってきました。

 

 『昨日』やらかしたイタズラのリカバリーに追われることになるのですが……という、「昨日」「今日」をひたすら往復するSFコメディです。


 まだ初々しい、瑛太、上野樹里、真木よう子、ムロツヨシといった面々が、くだらないことに一喜一憂するおバカな大学生を演じています。


 ひと夏のバカ騒ぎ、青春って「くだらないことを楽しめる」技術なんだよなあ……と遠い目をしたくなっちゃいますが。    


 この映画の原作は、上田誠率いる「ヨーロッパ企画」の舞台劇。

 映画では、タイムマシンのデザインはSFめいた格好良い乗り物ですが、舞台版では、モロに「のび太くんの引き出しにあるアレ」なデザインになっているのが笑えます。


「ヨーロッパ企画」の上田誠が、森見登美彦の小説を原作としたアニメ作品「四畳半神話大系」の脚本を手掛けた縁で、コラボレーション作品「四畳半タイムマシンブルース」も生まれました。


「四畳半神話大系」も、「主人公たちが大学生たち」という類似点も元々あったのですが、「四畳半神話大系」のキャラクターたちが、「サマータイムマシン・ブルース」と同じ設定(タイムマシンを使って「昨日の世界」にエアコンのリモコンを取りに行く……)という面白い世界線でのドタバタコメディとなっています。

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