第6話 頭に「か」のつく映画といえば?

 好きなドラマをテレビで見るひとときは、幸せな時間です。

 ひとつ、好きなドラマを想像して下さい。


 では、テレビの中に入って、ドラマの世界の登場人物になれるとしたら……?

 

 そんな流れで、頭に「か」のつく映画、「カラー・オブ・ハート」を紹介します。


 原題は「PLESANTVILLE」。


 1998年のアメリカ映画。監督はゲイリー・ロス、出演はトビー・マグワイア、リース・ウィザースプーン、ジョーン・アレン、ジェフ・ダニエルズほか。


 引っ込み思案でオタクな男子高校生・デヴィッドと、オシャレだけど尻軽な女子高生・ジェニファー。

 二人は双子の兄妹ですが、気が合わずに、テレビのチャンネル争いでリモコンを奪い合っていました。


 ジェニファーは、友人との話題のために流行のミュージックビデオのチャンネルが観たいと言い、デヴィッドは、1950年代の白黒ドラマ「プレザントヴィル」の再放送が観たいんだ、と譲りません。

 デヴィッドは「プレザントヴィル」オタクと言ってもいいほど、熱烈なファンなのです。


 奪い合っているうちにテレビのリモコンを壊してしまい、修理に来た電気屋さんが持ってきた奇妙なリモコンを使うと、その時にテレビで放送していた白黒ドラマ「プレザントヴィル」の世界に入ってしまいました。


 気づくと、デヴィッドとジェニファーは、「プレザントヴィル」の登場人物、バッドとメアリー・スーの兄妹になっています。

 自分も、周りも、すべて白黒の世界。


 1950年代のホームドラマな世界なので、平和すぎて退屈な日常(雨も降らないし、事件も起きない。男女交際は手をつなぐだけ)にジェニファーはウンザリするばかり。


「プレザントヴィル」オタクのデヴィッドは周囲のキャラクターや先のストーリー、今回自分たちが出ているエピソードが第何話なのかも分かって「テレビで見ていたあの世界が目の前に!」と少し興奮気味です。


 最初は、設定に沿った行動をしていた二人ですが、奔放な性格のジェニファーは「キャラクター」のメアリー・スーになりきることを完全に捨て、本筋のストーリーを離れて自由にやりたい放題。


 デヴィッドも、ジェニファーに引きずられるように、この世界で「本当にやりたい事」を見つけ、自分の意志で行動を始めます。


 すると、白黒のはずの世界に、部分的に「色」がつき始めるのです。


 ジェニファーやデヴィッドに影響された人たちもまた、白黒の世界から脱却し、鮮やかな「色」に輝いていきます。


 決められたことを繰り返すだけの「白黒」の街の中で“自由”を知った人物たちが「カラー」になっていく……白黒とカラーの混在する、不思議な映像のファンタジーコメディ。


 白黒の世界の中で、部分的に色がつく……映画「天国と地獄」(1963年)でも使われ、「踊る大捜査線 THE MOVIE」(1998年)でも引用されていた印象的な演出です。

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