第3話 頭に「う」のつく映画といえば?
夏休み、親戚の家に泊まりに行くのが、私の少年時代の楽しい思い出のひとつでした。
地元から離れた非日常、夏祭りの行事など……。
ですが、これから紹介する映画の主人公の少年は、母親に連れられて、どうやら気が乗っていない様子……。
というわけで、頭に「う」のつく映画。
今回紹介するのは、「ウォルター少年と、夏の休日」です。
原題は「Secondhand Lions」。
2003年のアメリカ映画。監督はティム・マッキャンリーズ、出演はハーレイ・ジョエル・オスメント、ロバート・デュヴァル、マイケル・ケインほか。
コミック作家として仕事をしているウォルターの元に、電話で「あるニュース」が入り、少年時代の回想に入る……という冒頭で始まります。
1960年代、十代半ばのウォルター少年は、道楽者の母・メイに連れられて、偏屈者の年寄りに預けられました。
周囲は何もないような牧歌的な光景の中で暮らす、すぐにショットガンをぶっぱなす問題老人、ハブとガースの兄弟。
ウォルターからすると、祖母の兄弟であり、大伯父にあたります。
母のメイは、男をとっかえひっかえで、施設に子供を預けてはぶらりと遠くに行ってしまう性格。
「あのおじいちゃんは家のどこかに大金を隠し持ってるって噂よ、子供相手なら油断するだろうから上手く聞きだしてきて」
と、そればかり。
あわよくば、ウォルターが、子供のいない老兄弟ふたりに気に入られて、遺産を残す後継者に選ばれれば、と期待しています。
こうして、二人と老人と田舎で暮らすことになった少年の、ひと夏のハートウォーミングストーリーです。
テレビも娯楽も何もない小屋での暮らし。
多感な十代のウォルター少年には退屈で仕方ありません。
一日でも早く帰りたい、母のメイが早く迎えに来てくれないかな、とウォルターは待っているのですが、ある日、老人たちと暮らす小屋の中で、美しい女性が写った一枚の写真を見つけました。
気になって、ウォルターが老人たちに過去を聞くと、ガースが優しく語ってくれました。
若い頃、ハブと二人で世界を回ったスリル満点の冒険……その物語は、ウォルター少年の心をくすぐります。
その写真の女性は、若き姫君ジャスミン。
そして、ジャスミンの婚約者だった、アラブの賊長との命がけの決闘など……。
ガースの語る回想録は、ウォルターにとって魅力的な非日常。
そんな経験を積んできた老人たちとの日々が、なんだかとても楽しく思えてきます。
そして、毎日のように話の続きをせがみます。
最初は老人たちを恐れ、母が迎えに来る日を待ち続けていたウォルターでしたが、自然と老人たちとの暮らしに慣れ親しんでいくのです……。
老人たちも格好良く、ただの気難しい頑固者と思いきや、街に出れば素行の悪い不良たちと喧嘩して、勝った上に更生させちゃう腕っぷしの強さを持っています。
老人たちにとっても、子供ならではの鋭い意見を忖度なくぶつけてくるウォルターとの触れあいは、変化のきっかけとなるようです。
原題の「Secondhand Lions」の意味が分かってくるあたりがいいんですよねー。
後味も爽やかな感動作ですので、ぜひおすすめします。
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