006 魔法の国 2日目
ピコは木のテーブルに、魔法の道具、なにかわからない物、麦の穂を並べた。昨日とおなじで、広場には人が多い。ほかの店は客で賑わってるが、ピコの店には寄りつかない。
「ここまでのヒマは初めてだな」
後腰の短剣をもぞもぞいじってるところに、王様がやってきた。
「ピコさん。お邪魔していいかな」
ガオが陽気に出迎える。
「よくきてくれたぁ! よーこそ! これはヒマな王様。むさくるしい店ですが」
「むさくるしいはよけいだ。あと王様にヒマってのも、本当だけに失礼だ」
「……ほっほっほ。ヒマは本当じゃが大臣にも言われたことないゆえ、直球はしんどいの。商品を見せてもらおう。この枝は火の魔法の道具、そっちは、水の魔法の道具だの」
「一目で見破るとは、さすが魔法の国の王様だ」
「ほっほっほ。形はどれも杖じゃが、火は赤。水は淡いブルーじゃ。こめられた魔力が尽きるまで初級魔法がだせる便利なものじゃが、民はみな使える。売るのは難しいじゃろ。こちらのえらく高額の穂が、麦の道から採取した麦かの」
王様がテーブルの麦に鼻をよせ、くんくん、匂いをかいだ。
「あたり。見渡す限り生えて採り放題。王様以外には売るのに、誰も買っていかない」
「ほっほ。麦はこの国にもあるでの」
「ピコ。どこにだって生えてる雑草みたいな麦に、銀貨5枚を払う物好きはいないよ」
「はっ! 金貨じゃないとダメだったか!」
「高いっていってんだよ。上げてどうする」
「ガオさんのいうとおりじゃ。おお。忘れておった。この国にはいつまでおるのじゃ」
「明日まで。三日ときまってるんだ」
「そうかそうか。がんばって売るのじゃぞ。ほっほっほ」
王様は帰っていった。
「ピコって商売ッけがないよな。明日まで何か売れないとマズイんじゃないのか」
「そうだ。非常にマズイことになる。でも売れないものはしょうがないのだ。暗くなってきた。店じまいだな」
「マジで、商売っけなし」
この天幕は大きくてガオくらいならすっぽり収まる。
ピコバールは、テーブルに商品を置いたまま、露店を閉めた。
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