第134話 ドワーフの住処

「おい、ドーリどうするんだ?」


「どうするも何も決めるのはトラベラだぞ?」


「そうだよな。今まではオークとして育てられてきたが俺達が育てたらドワーフに変わりないよな?」


 あれからドワーフ達はトラベラの子供について話し合っていた。生まれたばかりの子供をどうするかは、ドワーフ達には重要な問題だ。


 人間同士であれば問題ないが、相手が魔物となれば変わってくるのだろう。


 そもそも見た目は人間に近くても、オークは魔物に変わりはない。


 結局は産んだ母親であるトラベラに任すことになった。みんなが納得して幸せな生活ができれば良いがそんな雰囲気ではないのが現実だろう。


 いつまたオークに襲われるかわからないし、ひょっとしたら産んだ子供が襲ってくるかもしれない恐怖がある。


 そんな険しい空気の中、俺は今後のこともありドワーフ達に話しかけることにした。


 俺達も時間が限られている。


「すみません、今いいですか?」


「ああ、こちらの話に集中しててすみません」


 ドワーフ達は一斉に俺を見てきた。これだけの人数に見られると俺もたじろいでしまう。


「慧ってロリコンかショタコンなのか?」


 後ろでアホなことを言っている笹寺を桃乃は勢いよく叩いていた。一応後輩ではあるがしっかりしている桃乃に任せれば笹寺はどうにかなるだろう。


「そろそろ俺達も戻らないといけなくなりましたので今後のことについて話しておこうと思いまして……ドーリさん達はこの後どうしますか?」


「あれ? 名前を伝えましたか?」


「いえ、先程名前が聞こえたので――」


 俺はアイテムからハンマーやそのほかの道具を取り出し、ドーリに渡す。


「こっ、これは私の大事にしてたハンマーじゃないか!?」


「俺達はドーリさん達が住んでいたところから元の世界とこちらの世界を行き来しています」


 ハンマーは異世界と現実世界を繋ぐ穴がある集落にあった物だ。

 きっと彼らはあの集落に住んでいたのだろう。


「んっ、どういうことだ?」


「俺達にも詳しくはわからないんですが、こちらの世界に繋がる穴がドーリさんが住んでた集落にあるんです。そこからこの世界に来てejm2:32:°2・=:3」


「ん? 何を言っているんだ?」


「えーっと、ここには38gd%:|5:€<saf」


 俺はドワーフにこの世界に来ている目的を話そうとするが、勝手に口が動き知らない言語に変換されていた。


 桃乃の顔を見ると気付いてはいないため、ドワーフ達と同じ言葉を話していると認識しているのだろう。


「すみません、詳しいことは言えないようです」


「ああ、何か事情がありそうだな」


 なんとなくでドーリは理解したのだろう。


「これからの話ですが、このままここで生活をしますか? それとも元の集落に戻りますか?」


 俺はこの先の生き方をドワーフ自身で考えてもらおうと思っていた。


 ここの集落では人の目につきにくいという利点がある。また、近くにリョウタがいるため、魔物が寄りにくいのだ。


 ただ、リョウタ自体が俺には友好的だが、ドワーフに対してはわからない。


 一方、元の集落では一度オーク達に襲撃されている。そのため、オークに襲われる可能性があった。


 ちなみにリョウタには我の生活の邪魔をしなければ問題ないと聞いている。


 あいつってやっぱ犬みたいだし、引きこもりで風呂に入らないから臭いのだろう。


「私達はここに残ろうと思います。あいにく前の集落では水を汲みに行くのも遠かったですし、今はここにも水溜りがあったので、どうにかなると思います」


 ドワーフ達は俺達がいない間にこの集落を回っていたそうだ。生活水準が保たれるのであれば、リョウタの存在は気にならないらしい。


 それにしても水溜まりはどこにあったのだろうか。


 水溜まりがあるのなら、さっき渡した水に群がるのはおかしい。きっと何かが起きているのだろう。


「さっき持ってきた実と種を分けてもらってもいいですか?」


「私達は助けてもらった身分なので構いません」


 俺はオークの集落から回収した実と種を分けてもらうことにした。


「できれば何の実と種なのかわかる範囲内で教えてもらってもいいですか?」


 ダンジョンの中での失敗を生かして、今回は何の種かわかってから使うつもりだ。


「ああ、それなら適任がいますよ」


 ドーリが呼んだのは自分の娘で、一番初めに助けた女性だった。


「娘のリズウィンが農地の仕事をしていたので、その辺は詳しいと思います」


「わかりました」


 そう言ってドーリはまたドワーフ達の元へ戻って行った。


「えーっと、今回は助けて頂きありがとうございます」


「いえ、無事でよかったです」


 遅れて娘のリズウィンがやってきた。小さな体格ですらっとした手足が特徴だ。


 どことなくリズウィンの姿が亡くなった妹に似ていた。きっと生きていたらこんな姿をしていたのだろうか。


「どうしましたか?」


 ついつい、リズウィンを見つめていたようだ。


「すみません、よろしくお願いします」


 俺はリズウィンに一通りの種と実について教えてもらうことになった。

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