第122話 変わったクエスト
あれから部長に邪魔されることもなく週末になった。
今回はインデックスファンドとETF通信サービスセクターを買い増しした。
新しい異世界に来てから急に知らない魔物が出てくるようになって、自動鑑定の効果を高めたいというのが理由だ。
また、リョウタみたいな強い魔物にいつ遭遇するかもわからない。
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《ステータス》
[名前]
[能力値] 投資信託7,600,000口
[固有スキル] 新人投資家
[パッシブスキル]
[魔法スキル] 木属性魔法
[称号] 犬に好かれる者
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50万円分インデックスファンドを購入したが、俺の特性なのか物理メインだ。
違う投資先を検討しても良いが、全世界株式で総合的に購入しているため、購入する必要もない。
そしてステータスは上がったがスキルの変化はないようだ。
【ETFセクター通信サービスによる配当報酬。拡声器を三個配布します】
前回の配当報酬からだいぶ経ったが、今回は通信セクターからの配当報酬らしい。それにしても拡声器って必要になる場面があるのだろうか。
【今回の依頼は
今回も討伐クエストとは違うクエストに俺は驚く。桃乃も首を傾げていたため、同じことを思っているようだ。
そもそも民間人を見かけることの方が少ない。初めの方でゴブリンに犯されていた女性か、俺が倒れた時に回復ポーションを置いて逃げた女性しか知らない。
そんなことを思っていると、スカベンナーが待っている集落に移動していた。
「民間人の救助って私が迷い込んだ時もこんなクエストでした?」
以前の記憶を遡るが、確かあの時はポイズンスネークを倒すのが主な依頼だったはず。
「いや、あの時はおまけ程度だったぞ?」
「あっ……私はおまけだったんですね……」
俺の言葉を聞いて桃乃は露骨に落ち込んでいた。
いや、言葉は間違っていないが俺の語彙力のなさが招いたことだ。
「いや、そんなことはないぞ。あの時はももちゃんを助けるのに精一杯でポイズンスネークより――」
「くくく、先輩そんなに必死にならなくてもわかってますよ」
ああ、俺は桃乃の策略にハマったようだ。桃乃は特に気にしておらず、さっきの表情と動きは演技だったらしい。
絶対に桃乃は演技関係のスキルを持っているはずだ。
「とりあえず民間人がいそうなところを探さないといけないですね」
まずは集落があるオアシスのようなところを中心に見つける必要がある。砂漠のど真ん中で、何も道具がないやつらが生活できるはずがない。
俺達はこの世界に詳しいと思われるスカベンナーのベンに会いに行く。
「よっ! 元気にしてたか!」
スカベンナーは食糧庫の穴の近くで心地よさそうに寝ていた。
俺達の存在に気づくとにやりと笑っている。
前は不気味に思ったこの顔も、元からだと思えば次第に可愛く見えてくる。
チラッと食糧庫を覗くと桃乃も気になったのか後ろから見ていた。
前回、現実世界に戻るタイミングで俺達はベンに食料の確保と実験も踏まえて沢山の魔物を用意していた。
「やはり時間が進んでますね」
「あれだけ用意したのにほとんどないもんな」
ベンが大食いでなければすぐに無くならないぐらいの食料を置いていた。実際に確認したら半分以下になっている。
「お前って大食いか?」
「グェッ!?」
ベンは俺の言葉を聞いて全力で首を横に振っていた。
ハイエナは1回の食事で多くても、15kg程度食べると言われている。
わざと安全な場所で保管しているため、よほどのことがない限りは大量に急いでは食べないと思う。
時間軸自体は異世界の方が早いのは変わりない。
ただ、一日に一体を食べているとすれば、およそ倍速ぐらいで時間は進んでいるようだ。
「それにしてもサンドワームって美味しいんですかね?」
「……」
「いや、流石にあの幼虫みたいなやつは食べないですよ?」
桃乃を見るとすぐに否定していた。それでも今の発言だとサンドワーム以外は食べるのだろうか。
俺達はそのあと集落を回ってみるが、特に襲われた形跡もなく前回と変化はなかった。
アイテム欄を開き耐熱ポーションを取り出す。
残りわずかになってきたため、自動アイテム生成にトレントの実を入れようとする。前回のことを思い出し、一度魔刀の鋸で小さくしてから入れると生成時間が短縮していた。
「民間人の救出にレッツラゴー!」
相変わらず桃乃のテンションは高かった。毎回旅行に行っている気分なんだろう。
俺達は歩き始めると何か違和感を感じた。いつも後ろから付いて来ているベンが、集落から出る前で止まっている。
「おーい! ベンは行かないのか?」
ベンに遠くから声をかけると、そのまま寝ているようだ。
「今日は珍しいですね」
「疲れているんだろうな」
「そういう日もありますよね」
今回はベンを集落に残したまま、マッピングも兼ねて前回リョウタに会った遺跡から先を探索することにした。
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