第109話 異世界の変化
「ももちゃんここって……」
「この間の集落で合ってますよ」
周りを見渡すと、やはり現実世界に戻った時の穴がある集落で間違いないようだ。
それにしてもどことなく集落内の何かが変化している。
「何か違わないか?」
「一緒だとは思いますが……少し荒れてますか?」
確かに前回来た時よりも建物はさらに崩れ落ち、集落が荒れている気がする。元々荒れている集落だから、わかりにくいのが現状だ。
今までの経験では俺達が現実世界に戻れば異世界の時間は止まっているかわずかに進んでいる程度だった。しかし、その考えであれば異世界に来たタイミングでスカベンナーが穴の前にいるのが普通のはず。
そもそもコボルトなら俺達が気づいたことをすぐに察知して寄ってきていたが、スカベンナーは違うようだ。
「とりあえずスカベンナーを探してみるか?」
「それがいいかも知らないですね」
まずはスカベンナーを探すことにした。初めにスカベンナーがオークを隠していた穴に向かうことにした。距離としては一番近いため、きっと食糧のことも考えるとそこにいる可能性が高い。
「それにしても荒れてますね」
「この間も荒れていたけどさらにぐちゃぐちゃだな」
建物自体が壊されているものが増えているが、中まで荒れている。まるで隅々まで探しものをしているようだ。
「ももちゃんストップ」
俺は異変に気づき手を横に突き出した。桃乃がそれ以上歩かないように静止させる。
装備画面に切り替え、魔刀の鋸を装備して周囲の警戒をする。俺の動きに気づき、桃乃もヘルメスの杖を装備した。
そのままスカベンナーの穴に近づいていくと、さっきより異変が強くなっていた。どこか血の臭いを強く感じる。
前回オークを倒した時はそこまで血の臭いはしなかった。
俺が物陰から覗き込むと、そこには穴の前で血だらけで倒れているスカベンナーがいた。
「おい、大丈夫か!」
俺は警戒を強めながらも、スカベンナーに近づくが辺りには敵らしいものは存在していない。
どこかかなり前にやられたような傷をしていた。
「ももちゃん間に合うか?」
スカベンナーの状態を確認している桃乃に聞くと頭を縦に振っていた。
「ただ、時間がかかるかもしれません」
どうやら息はしているため命には問題ないらしい。ただ、危険な状態なのは間違いない。
俺は急いで回復ポーションを取り出しスカベンナーに飲ませる。魔物に飲ませていいのかはわからないが、回復魔法よりは効果が早く出るため使った方が命は助かるだろう。
それと同時に桃乃は回復魔法の発動を始めた。
スカベンナーが血だらけで倒れているということは、ここまで傷つける何者かが集落に侵入していた。
俺はその証拠を探すために辺りを見渡す。
「オークの死体がない……?」
あれから2週間程度しか経っていないが、時間の進み方が違う異世界ではオークの死体はそのまま残っているはず。
しかし、現状は穴の中にすらオークの骨すらも残っていない。
「先輩、ベンが目を覚ましました」
スカベンナーは俺達の存在に気づくと、安心したのか桃乃にべったりとしている。
そんなに体をスリスリすると桃乃がまたオークに襲われるではないか。
「おい、ベン!」
俺はスカベンナーに近づくとにやりと笑っていた。
前も現実世界に戻った時に感じたが、どうやらスカベンナーは怪しい顔で笑うようだ。
「ひょっとして俺らが前来た時ってだいぶ前か?」
俺の言葉を理解しているのかスカベンナーは頷いている。
「ここにオークの死体がないのも……」
スカベンナーに近づき撫でると、震えも次第に収まりだす。
「それにしてもどのぐらい時間が経ったんですかね?」
それは俺も気になっていた。時間軸が違うのは理解しているが、どの程度違いがあるのか今のところわかっていない。
「今回の依頼って制限時間2日ってなると明日の仕事に間に合いますか?」
「時間もだけど遺跡発掘って何をすればいいんだ」
今までは討伐依頼が多かったのだが、今回は初めて遺跡発掘という何をすればいいかわからない依頼だ。
そもそもこの砂漠の世界に来てから、遺跡っぽいものをまだ見かけたことはない。
「ベンって遺跡を見たことがあるか?」
スカベンナーに聞いてみると反応はなかった。どうやら遺跡というものを理解していないようだ。
「何かしらの建築物を探すしかないですよね」
桃乃が何か空中に触れていると俺の地図機能に"new"と表示されていた。
ひょっとしてまさか……。
桃乃を見るとスカベンナーのようににやりと笑っている。
「自動マッピングに共有機能が増えました」
どうやら買い増ししたことにより、桃乃の自動マッピングで書いた地図が俺にも共有できるようになったらしい。ただ、マッピングできるのは桃乃だけなのは変わらない。
それでも今後の探索には便利になりそうだ。
「じゃあ、まずは遺跡を探そうか」
俺と桃乃は集落から出ることにしたが、後ろからスカベンナーが追いかけてきていた。
オークにやられてから集落で待っているのが怖いのだろうか。
「一緒に来るか?」
スカベンナーに聞くとやはりにやりと笑っていた。相変わらず笑い方が不気味なのは変わらないようだ。
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