第47話 スライムの住処
俺と桃乃はスライムを探しに歩いていた。二人のイメージからスライムはゲームの序盤の敵のためその辺にいると思っていた。
しかし、見つかるのはゴブリンばかりで森に近づいてもポイズンスネークがいたぐらいだ。
そういえば、ポイズンスネークを見た桃乃は無双していた。この前の怨みを晴らすべく見た瞬間に魔法を放とうとしていたのだ。自我を忘れたように魔法を発動しようとした時は驚いた。
場所も木が多い所だったため、火事になることを想定しその場で辞めさせた。
俺はポイズンスネークをスコップで燃えるものがない所まで飛ばし、桃乃が魔法を使えるように環境を整えた。
「死ね死ね死ねぇーー!」
気づけば真っ黒焦げになったポイズンスネークの出来上がりだ。
自分で倒すことで怨みを晴らすことが出来たようだ。しかし、その後の桃乃は悪魔に変貌した。
「ひひひ、蛇はどこだー。ぶち殺してやる」
さっきからずっとぶつぶつと独り言を言っているのだ。桃乃だけ異世界に来ると麻薬みたいな状態異常の付与がされるのだろう。
あと、回収については色々試した結果、一度ちゃんとしたダメージを与えれば回収が可能になることがわかった。
また、どれだけ命に関わる攻撃をしたかで魔物の素材に変化している。
俺が軽く突いた場合は体の一部が袋に入っていたが、ほぼ俺が倒すと魔石に変わっていた。
この理論からすると、魔石が一番高価に売れているため、理論上は貢献度が高い順で良い素材が手に入るという認識になる。
「全然スライム見つからねーよ」
そんな俺達はまた街の跡地に戻ってきた。どこを探してもスライムは見つからないのだ。最弱の魔物が見つからないってゲームの中ではありえない。
他にも人や知らない魔物が出てきてもいいはずだが全然出て来なくなった。初めて異世界に来たときに人と会ったのは滅多にない稀なことなんだろうか。
そして、索敵が得意なコボルトに助けを求めて、スライムの居場所を聞くが拒否するばかりだ。
拒否と言っても魔物は倒してくれるため、問題はないがなぜスライムの探索だけ拒否するのか謎だが。
「お前達どこにいるかだけ教えてくれよー」
俺はコボルトのお腹を撫でまくると、堪忍したのか鼻を押さえる動作と地面を指さしている。
これで同じ動作をするのは何回目だろうか。ずっと両手で鼻を押さえてから、地面を指差すのだ。
その愛くるしい姿は可愛いとしか言えない。
「ガゥ……」
意図が伝わらないからか、コボルト達も尻尾がだらんと下がっている。
「地面が臭いってことですか?」
俺はコボルトの動きを読み取る。飼い主と言っても過言ではない、俺なら何を言っているかわかるはずだ。
「ガウ! ガウ!」
桃乃の言葉に反応して、コボルト達は全力で頭を横に振っている。そんなに否定しなくてもいいのではないか。
「臭いところで下にいるってことですか?」
桃乃はコボルトの動きを読み取っていたらしい。 頭が飛んでいく勢いで頭を縦に振っている。
俺には全然わからないが、コボルトの反応からどうやら合っているらしい。
ついに飼い主卒業か……。
桃乃は街の跡をキョロキョロと見渡して、あるものを探していた。
「先輩、マンホールをありました」
桃乃に呼ばれたところに行くとそこにはマンホールがあった。
マンホールがあるってことは地下に入ることができるのだろう。
ひょっとして地面で臭いということは、地下で何かコボルトが嫌いな臭いの原因があるということだ。
俺は勢い任せでマンホールの蓋に指をかけて引っ張ると少し隙間が空いた。
その隙間から溢れてくる臭いにコボルト達は身震いしていた。
そのまま隙間にスコップを挟み入れ、テコの原理を利用して蓋を持ち上げると、大きく円を描くように飛んだ。
「キャン!」
マンホールを開けた瞬間、コボルト達は遠くに走って逃げていく。その原因は地下から来る強烈な
「ここにスライムがいるんですか?」
俺と桃乃がマンホールを覗き込むと、中はわずかに光が入り、奥の方は明るくなっていた。
俺でもマンホールからの臭いに、鼻の奥が少し痛くなるほどだ。
「俺達でも臭いから鼻が効くお前達じゃ辛いだろうな」
俺の言葉にコボルト達は頷いている。必死に両手で鼻を押さえている姿が可愛い。
臭いも下水独特な臭さもあるが、死臭のような何か腐った臭いもしている。
マンホールの中は衛生的にあまり良くはないだろう。
「時間を決めて早く行かないと俺達も体調を崩しそうだな」
「そうですね。なるべく短めに行きましょう」
マンホールの中にある
「おーい、お前らは来ないのか?」
「ワォーン!」
俺が地上に向かって叫ぶとコボルトが悲しそうな声で吠えていた。どうやらコボルト達は付いていけないようだ。
流石に無理をさせるのも悪いと思った俺達はゆっくりと梯子を降りていく。
今回はコボルト無双は諦めて、俺達はスライムを探しにマンホールの中にある下水道の中を探索することにした。
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