第41話 証券口座について
桃乃の一言に俺は驚き、空いた口が塞がらなかった。
「えっ、もう一回言ってもらってもいいかな?」
今のは俺の聞き間違いかもしれない。そう思ったから再度聞き直した。
「だから、私を
今度は俺にもわかるように大声で言っていた。
むしろ聞こえなかったわけではないが、やはりそこは真面目なのか聞こえやすいように配慮している。
他の人が聞いてたら、頭がおかしい大人達がいると通報されただろう。
ベンチに大人二人が座って異世界に連れてって欲しいって言ってるのだ。そして、その周りを犬が楽しそうに回っている。
側から見たら変わった空間だ。
「おお、おう!」
今度は伝わったとわかったからか本人も満足気な顔をしていた。
「私も克服したいんです」
「えーっと……異世界を?」
「それもありますが、過去の弱い自分を変えたいんです」
「詳しくは聞かないけど、早速だが異世界に行く前に準備はある程度しないといけないな」
どうやら桃乃にも言えない何か事情があるのだろう。
早速異世界に行くための準備を伝えた。本人はもう行くのですか?というような顔をしていたが、実際に行くのはだいぶ後になってからだ。
「異世界に行くのにある程度の能力をつけないといけないね」
「能力ですか?」
「ああ、簡単にいえば投資を始めることだ」
ある程度投資しないと、異世界に行っても死ぬかもしれない。俺も桃乃を守りながら戦える自信がない。
俺は事前に投資信託を始めていたため、異世界に行ってもどうにかなった。しかし、まだ証券口座も持っていない桃乃にとっては、また異世界に行ったら命の問題になる。
「まずは投資信託で身体能力を上げる必要性があるか」
現在購入している投資先とそれで得られている能力を説明する。
――――――――――――――――――――
【ETF】
情報技術:思考加速、並列思考
ヘルスケア:HP自動回復、疲労軽減
通信サービス:スキル自動鑑定、自動翻訳
【投資信託】
全世界株式インデックス・ファンド:
――――――――――――――――――――
「結構優秀で便利なスキルですね」
基本的に必要なのはステータスの増加。その後にETFなどによるパッシブスキルの獲得だ。
しかし、忘れていけないのは全て投資商品で手に入れるということだ。分散し過ぎても能力にはならないし、一つに絞って購入してもリスクを上げてしまう。
そこは自分に合ったリスクマネジメントをする必要がある。
「まずは投資から始め……始めるにはどうするんでしたっけ?」
「まずは
証券口座と聞いてなんとなくは知っている程度だった。
「証券口座は証券会社を通して投資信託や株式を買うために必要な口座のことだ。これがないと投資はできないからな」
桃乃はスマホを取り出して、証券口座について調べ始めた。さすが真面目なだけあってすぐに調べている。
どこかの脳筋とは違って……。
♢
「はっ、くしょん!」
「風邪ですか?」
「ああ、すみません。契約中にくしゃみをしてしまって……」
「いやいや、独特なくしゃみで面白いですね。笹寺さんイケメンですからどこかできっと噂してますよ」
「いやー、可愛い女の子だといいですね! ははは!」
♢
「証券口座もたくさんありますね」
証券会社が多い分、証券口座もどこで作るのかで変わってしまう。基本的にはネット証券が簡単で便利、そして手数料が少ない。
投資を始めるにあたって手数料の比率は大事になる。
総合証券ではいわゆる証券マンに相談ができるようになっている。しかし、その傾向として高めの取引手数料が設定されている。
株を始めたいけど、誰かのアドバイスを参考にしたい、実店舗型に相談したいって人にはオススメだ。
結局は投資自体が自己責任となるため無駄に手数料を払うぐらいなら、リスクが低いものに投資したいと思っているのが俺のやり方だ。
「ネット証券で使えるクレジットカードはあるか?」
「あっ、このカードなら持ってます」
桃乃は有名なお買い物サイトのカードを使っていた。
クレジットカードの引き落としと同時に投資信託を積み立てたり、クレジットカードを使うことでポイントがもらえるサービスがあったりなど様々な違いがある。
「あとはそもそも、証券口座で買える株式とかが違ったりするからどの投資信託や株式が欲しいか決めてからでもいいかな」
同じような投資信託だが、会社毎で手数料が一部違いがあったりする。
俺の話に桃乃はさらに迷っていた。それにしてもすぐに理解できるのは、どこかの誰かとは違う。
「とりあえず証券口座を作るところからスタートかな」
「わかりました。マイナンバーカードもあるのですぐに作りますね」
ネット証券であれば、本人確認書類とマイナンバー通知書があればすぐに開設は可能だ。
気づいたらココアはつまらなさそうに尻尾を俺に叩きつけていた。どうやら帰りたくなったのだろう。
「そろそろ帰ろうか」
「ココアも帰りたそうですしね」
桃乃の声にココアは尻尾振っていた。さっきまで俺に構ってくれと言っていたのに現金なやつめ。
「じゃあ、また今度な」
「いや、また明日ですよ!」
どうやら明日から職場復帰するつもりだったらしい。桃乃はココアを連れて帰って行った。
ベンチに残された俺は改めて自身のことを考えていた。今後のこと、異世界での副業のこと、今後何が起こるかわからない世の中でどのように生活すれば幸せになれるのか俺は今日も模索するのだった。
そしてまた明日には普段と変わらない日常が始まる。
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