第19話 新しい ETFで異世界挑戦
俺はインデックスファンドは買い増しせずに、ETFを買い足すことにした。今後、異世界でクエストをクリアすることを考慮したら、パッシブスキルで何が手に入るか確認する必要があった。
インデックスファンドを買っても、ステータスが高くなるだけで思考加速と並列思考には敵わない。また、現実世界に反映するパッシブスキルの方が使い勝手もいい。
前回同様に情報技術の割合が多いETFと新しく2種類のETFを買うことにした。その2種類とはヘルスケアセクターと通信サービスセクターを多めに含むやつだ。
他にも少額で色々購入してみたが、少額でも効果があるのか気になるところだ。
実験的に購入したため、値上がりしたタイミングで売るつもりだ。
庭に出来た異世界に繋がる穴の前に立って、入る準備はできている。あれから数日しか経ってないが、仕事効率が良くなったことで休みが早く取れたのだ。
俺は辺りを確認しながら穴に入ろうとした時、やっぱりやつは声をかけてきた。
「慧くーん!」
「おばさんどうしたの?」
声をかけてきたのは隣に住むおばさんだ。毎回異世界へ行こうとすると、何故かちょうどいいタイミングで現れる。
せっかく会いにきてくれているのに、無下に扱うもできない。いつも袋に入ったおかずをチラつかせてくるのだ。
決しておかずにつられているわけではない。
「今日も作りすぎちゃっ……こんな暑い中で厚着してどうしたの?」
いつもは世間話しかしないが、今日は珍しくいいところを突いてきた。
俺は防弾チョッキを今回は着ているからだ。前回とチュートリアルのときは服装はそのままで異世界に行っていた。
あの時は荷物は没収されたが、服はそのまま着ていた。そこで俺は服なら没収されることなく、異世界に行けるのではないかと予想している。
「最近街中で流行りらしいんですよ」
流石におかしいとは思ったが、お洒落と言っておけば問題ないと思った。
これだけ頭の回転が早いのは思考加速と並列思考が発動しているからだろう。
「以前釣りをする人が着ているベストが流行っていたけど、次は防弾チョッキ風なのね」
「そうよ! 今の時代は防弾チョッキなのよ!」
以前アウトドアブームでフィッシングベストが世間で流行していた。今回はそれを逆手に利用することにした。
それにしても焦って口調がめちゃくちゃになっていた。おばちゃんの
「私はお洒落なんて無縁だからわからないのよ!」
そう言っておばさんは笑っていた。どうにか誤魔化すことができたようだ。
防弾チョッキが流行る時は、きっと外に出歩くことができない時代だろう。
「じゃあ、おかずを渡しておくね! また、食べ終わったタッパーは袋に入れて玄関に掛けておいてね」
いつもおかずが入ってたタッパーは洗って、おばさんの玄関の取っ手にかけて返すようになっている。
お互いずっと家にいるわけでもないため、手渡しできる機会がないのだ。
俺はいつもそこにメモを入れて返している。
時計を見ると今回は10分ぐらい話すと解放された。
「そんなの着ても没収されるわよ」
おばさんは何か言っていたが、俺には何も聞き取れなかった。
「よし、気を取り直して金稼ぎをしようか!」
俺は気合を入れ直して庭にある異世界に繋がる穴に入った。もう頭の中はお金のことでいっぱいだ。
いつも通りに奥まで進むと、突然アナウンスが脳内に流れた。
今回は防具も揃えたし準備万全だ。
あとは良いパッシブスキルを得るだけだ。
【ETF内訳セクターヘルスケア20%保持。カテゴリーパッシブスキルHP自動回復と疲労軽減を獲得】
ヘルスケアらしいパッシブスキルを手に入れた。HPの概念が何と関係しているかはわからないが、パッシブスキルを獲得することで自動で回復するようになったらしい。
これでダメージを受けても怪我が回復していくのだろうか。そしたら俺TUEEEに近づくであろう。
【ETF内訳セクター通信サービス20%保持。カテゴリーパッシブスキル自動鑑定と自動翻訳を獲得】
自動翻訳は通信サービスのため、なんとなく理解はできたが、自動鑑定が手に入るとは思いもしなかった。
鑑定って言ったら、小説やゲームにも出てくる代表的なスキルだ。それがパッシブスキルで手に入れた。
今まで魔物の名前は認識できたが、これで弱点なども分かれば戦いやすくなるのだろう。
しかし、ゲームとかだと鑑定って普通にアクティブスキルのイメージだが、自動で鑑定するとパッシブスキルになるのだろうか……。
今回もこの能力がどのように活躍するか俺は楽しみだった。
しかし、この先絶望に落とされるとは俺はまだこの時は思いもしてなかった。
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《ステータス》
[名前]
[能力値] 投資信託1,150,000円
[固有スキル] 新人投資家
[パッシブスキル] 思考加速、並列思考、HP自動回復、疲労軽減、自動鑑定、自動翻訳
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