第7話

「第四の神器は平家にあり。源氏はいちの露命としれ」

 平知盛は豪傑笑いをしながらいった。

 ないに景時はおもう。なにかがおかしい。こやつ。『なにか』をかくしておるな。増長天すなわち景時がいう。「源氏が露命なればなにゆえにいまこそ第四の神器をつかわざれ。貴殿も承知であろう。第四の神器は神の怒りにほかならぬ。第四の神器をもちいれば神州もただではすまぬであろう。ゆえに平家はいまだ第四の神器をもちいざるとおもうところなり」と。知盛はぜんたる笑顔のなかにそこはかとなく憤怒をほとばしらせていう。「なるほど貴殿はさかしきものなり。ここで第四の神器をもちいれば源氏方のみならず平家方も無事ではすまぬやもしれぬ。そも第四の神器をもちいずとも勝運はわれらにあり。ゆえにわれらのかみがみによりてしゆえいをきそわんではないか」と。『かみがみによりてしゆえいをきそう』のである。景時の操縦する増長天は左手の鉄拳を知盛へとむけ白銀のつるぎを背後にかまえて背中のえんの円環をえんいつかいてんさせた。

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