戦争は若者の顔を知らない。

@Yulii_Smirnov

第1話 戦争の波音~2022.02.24~

 ロシア軍によるウクライナ侵攻によって亡くなられた、

 ―全てのウクライナ兵、ウクライナ市民の皆さま―


 ならびにプーチン大統領の理不尽で不要不急な戦争に付き合わされ亡くなった、

 ―不本意に動員された一部のロシア兵の皆さま―


 そして、世界各地から集まり、一人また一人と亡くなった、

 ―外国人義勇兵の皆さま―


 後方での反戦運動や妨害工作で当局に消された、

 ―パルチザン活動の皆さま―


 この戦争で亡くなられた全ての方に哀悼の意を表します。



 私はこの戦争に、日本という後方で一年間でどっぷり浸かってきました。

 簡単に言えばOSINTです。衛星画像を覗いたり、ロシア軍の徴兵事務所の一覧を作ってみたり、そんな感じです。細かくは追って書いていくことと致しましょう。

 プロではなくとも、知らなくていい、知りたくなかった物事も数多くありました。でも、現地じゃないからマシなのだけは事実でしょう。

 そんな恵まれた銃後の戦争ならば、辛くても、それらから目を背けるのは違うと思ったのです。

 というのも、大好きな漫画家さんが戦時下での女性の生き方を描いていた作品からモチベーションを頂いたからです。そして原作も少し読み始めました。

 戦争に関っている間には余りに辛いものがあるから、読み進められない部分もあります。

 それでも、誰かが書き記すから人に伝わるのでしょう。


 戦争が始まってちょうど一年。

 ここに、軍事作戦に関係ない範囲で、なるべく私や周囲で見聞きしたことを後世に遺すことにしました。


 ______________________________________

 ―2022年2月24日―

 まだコロナ禍も明けない世界は別のことに驚いた。

 私の場合は世間程には、驚かなかった。

「やっぱり、やりやがった…か」

 ただひたすらに、それが素直な感想だった。

 思い返せば、ネットミームと化していたロシアの軍事用短波無線局が、一昨年の11月頃から余りに通信量が増えていた。電波ジャックで好きな曲流したり、そんな悪戯はロシアが活発に無線を使えば使うほど、エスカレートしていった。

 その頃は、モスクワに住む友人とは

「気を付けてね、何が起きるから分からないから」

 そんな程度で連絡を取っていた。

 呑気なもんだった。

 その段階で既にやるべき事をやっていなかったのに、よく彼とはこの戦時下でのコミュニケーション手段を維持したなと思う。

 本来であれば、

 ・電波ジャックされるほど送受信方法の解析が進んでいる

 ・それでも同じ回線で通信し続ける

 ・これは何かしら軍事作戦を行うのは既定路線。

 そう取らない方が不自然ですらあるのだろう。

 ただ、当時はそんな事を考える様なストイックな思考は持ち合わせてはいなかった。そもそも、この時点ではOSINTなんてやるとは思っていなかった。

「好きな曲をYouTubeでリクエストして楽曲を流してもらう」

 面白おかしく妨害すれば、戦争なんてこの時代に起きる筈がない。そんな馬鹿げた慢心が、心の何処かにあった。

 それでも、令和になって既に半分以上、この時代が人々を弄ぶことも知っていた。だから、私にとって驚きは余り無かった。一喜一憂する余裕がこの段階で無かったかも知れない。

 ニュースに流れる、ウクライナとの国境検問所を超えるロシア軍先鋒部隊、それよりもモスクワに住む友人が少し気掛かりであった。

 検閲とか、徴兵とかされないといいけど一応、VPNとかTorとか色々調べてみるか。戦争に行かなくて済む手段も何かありゃいいけど。

 そんなことをザックリと考えながら、この日は過ごした。

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