　天使たちが乱舞している。

　戦闘天使たちがジブリ―ル教徒たちを殲（せん）滅（めつ）せんとしている。

　ハンナばあさんはおもう。なんてうつくしい破滅かしら。二〇一一年に勃発したシリア内戦における不（ふ）倶（ぐ）戴（たい）天（てん）の政府軍と反政府軍との衝突によりコンクリートづくりである灰褐色のビル群が無（む）慙（ざん）にも羅（ら）利（り）粉（こつ）灰（ぱい）にされたシリア最大の都市アレッポにてアメリカ陸軍の歩兵たちを搭乗させた四輪駆動の対地雷・伏撃防護装甲車であるマックスプロ MRAPの群像が疾風迅雷の勢力で卍（まんじ）巴（ともえ）になり疾駆していた。巨大なる体躯ながら狂（きよう）瀾（らん）怒（ど）濤（とう）の風（ふう）丰（ぼう）で跳（ちよう）梁（りよう）跋（ばつ）扈（こ）している装甲車の一輌（りよう）内にはなぜか莞（かん）爾（じ）たる『ハンナばあさん』が鎮座していた。因（いん）陀（だ）羅（ら）網（もう）の無線通信によって他車（しや）輌（りよう）から連絡が這（は）入（い）る。いわく「アレッポ城北西にて『復活の日』残党と交戦中。各車（しや）輌（りよう）に量産型『システム』の総起動を希求する」と。莞（かん）爾（じ）と微笑して連絡に傾聴していたハンナばあさんは両隣に連座している歩兵たちと両手をつないでいった。いわく「みなさん準備はできていますね。いまこそ邪悪なジブリール教徒たちを鏖（みなごろし）にするのです。大丈夫わたしたちには天使様がついていらっしゃいます」と。