第8話

『神は存在しないから』です。

 ようなわたくしはりすときよう圏特有の『ゴッド・ブレス・ユー』という挨拶がきらいでした。『カミノメグミアレ』とでもいいましょうか。『あの日』もれいめい時に散歩をしていると『愛すべき隣人』が『ゴッド・ブレス・ユー』と挨拶してきました。わたくしはいんぎんに返事をすると『神なんてとっくに死んじまったよ』とひとりごちました。ようにして『あの日』がおとずれたのです。みなさんおぼえてますでしょう。悲劇の爆心地となったマンハッタンに『神ヤハウェ様がおみえになられた』のです。神という概念を憎悪していたわたくしはてつもない衝撃をうけました。『神は存在した』『『聖書』はただしかった』『まちがっていたのはおろかではずかしい自分のほうだった』と。科学がなんでしょう。哲学がなんでしょう。あのげた『無神論者』たちがなんでしょう。『神は実際にいらっしゃったのだから存在する』のです。『あの日』に世界はかわりました。『どもの時代から神の時代へとかわった』のです。みなさん神をしんじましょう。みなさん神を愛しましょう。みなさんりすときようをしんじましょう。さあ『Hallelujah』。神は偉大です。ヤハウェ万歳。ヤハウェ万歳――」

 ハンナばあさんの説教はしゆうえんをむかえた。

 大聖堂のあちらこちらからきよのこえがきこえる。

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