第46話

 二〇一九年五月一日。

 明仁陛下より徳仁陛下へと皇位がせんされた。

 今上裕仁陛下の御けついんたる明仁陛下が神聖なる天皇陛下の玉座より御退陣なさって徳仁皇太子殿下があらたなる天皇陛下と相成られたのだ。徳仁陛下即位の礼当日けんらんごうなる摩天楼のしつする大都市東京のきゆう窿りゆうにはあいたいたるむらくもさんそうしてせきれきたる雨粒がふりそそいでいたがしばらくして密雲よりいちの陽光がさしてきてさんらんたるそうきゆうかいえてきた。かくやくたる太陽の輝きがアマテラスオオミカミのによるものなのか『われわれ』神國国民にはしゆんべつしかねた。はたしてかみがみはいまだ生きておわしますのだろうか。『あの宇宙』とおなじくかみがみはすべてにふされてしまったのだろうか。そもそも『われわれ』はかみがみの力がなければ生きられない存在なのだろうか。ともかくのうは神のけついんとされた皇室の世界にあらたなる天皇陛下が御即位なされたのだ。『われわれ』全日本神國国民は透明無色のこんぱくのままふくげきじようの即位式を見守りせいひつとして万雷の拍手をおくらせていただいた。てんじようきゆうの中天よりい『この』日本のあれこれをちようかんしていた『われわれ』のうちあいまいたる金城大尉のこんぱくは『気付いた』。そこは『われわれ』からすれば未来の新宿にきつりつする新宿アルタと呼称される鉄塔のなる『画面』とよばれる『鏡』のまえであった。巨大なる『画面』には即位礼正殿の儀によって御高座より即位の宣言をなされる徳仁陛下の姿すがたが映写されていた。新宿アルタなる鉄塔のもとには巨万の『この日本』の国民がしようしゆしていてあるものは拍手しあるものは腕組みして『画面』を凝視しあるものは『天皇制反対』とごうされた看板をもってなにやらほうこうしていた。しやはんの群衆のなかに量子力学的に人生が分岐して『この日本』を生きている『金城ひろ』がいた。

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