「日本だ」「日本が生まれた」「わたしたちのふるさとが生まれた」――と。

　嚮（きよう）後（こう）『この膜宇宙の日本人』たちは縄文時代をけみし弥生時代をへて邪（や）馬（ま）台（たい）国（こく）を豎（じゆ）立（りゆう）させた。そこから中華文明との交流がはじまりヤマト政権が飛鳥地方に樹立されて日の本の國『日本』という国号がさだめられた。旱（かん）魃（ばつ）や飢（き）饉（きん）に猛襲された奈良時代をのりこえ諸行無常盛者必衰の平安時代をすぎて壇ノ浦の戦いにて安徳天皇陛下が入（じゆ）水（すい）され鎌倉時代に這（は）入（い）ってゆく。因（いん）陀（だ）羅（ら）網（もう）の南北朝時代をけみし室町時代をへると死（し）屍（し）累（るい）累（るい）鬼（き）哭（こく）啾（しゆう）啾（しゆう）たる戦国時代へと突入した。安土桃山時代を過ぎたところで江戸幕府が聳（しよう）立（りつ）することとなる。鼓（こ）腹（ふく）撃（げき）壌（じよう）の江戸幕府もペリーの来航によって形（けい）而（じ）上（じよう）学（がく）的激震をこうむり澎（ほう）湃（はい）たる内乱ののちに明治維新という終（しゆう）焉（えん）をむかえた。明治時代には日清日露戦争に凱（がい）旋（せん）し大正時代には第一次世界大戦の釁（きん）端（たん）が開かれついに激動の昭和へと驀（ばく）進（しん）していった。ABCD包囲網で四（し）面（めん）楚（そ）歌（か）となった大本営は第二次世界大戦への参戦を蹶（けつ）起（き）したのである。『われわれ』全日本人は応援した。「負けるな」「日本よ。負けるな」「おれたちは負けたけれどきみたちは負けるな」と。ミッドウェー海戦を分（ぶん）水（すい）嶺（れい）とし大日本帝國は劣勢となってゆき広島と長崎に『天罰』ではなく『新型爆弾』が投下された。それはこの世の地獄だった。『われわれ』全日本人は欷（き）歔（きよ）し慟（どう）哭（こく）し号泣した。「負けてもいい」「日本よ。負けてもいい」「日本よ。これ以上傷付かないでおくれ」と。『われわれ』のねがいどおり大日本帝國政府はポツダム宣言を受諾し『敗戦』した。斯（か）様（よう）にして『この膜宇宙の帝國』は『日本国』へとうまれかわった。『われわれ』は欣（きん）喜（き）雀（じやく）躍（やく）した。「平和だ」と。「十五年の戦争がおわったんだ」と。「ぼくたちの日本に平和がおとずれたんだ」と。無論それからも日本国はさまざまな国難におそわれた。新潟地震を劈（へき）頭（とう）とする各地の天変地異や新興宗教による無差別毒瓦（が）斯（す）テロや永遠にわすれられない東日本大震災に見舞われた。