『最後の審判』は黙示録どおりにおこなわれた。

　全人類は未（み）曾（ぞ）有（う）の悲劇に猛襲された。

　まず七個の瞳をもった黙示録の子羊が七個の封印を開封する。純白の馬の騎士が勝利のために疾駆し真紅の馬の騎士が世界にさらなる戦争をもたらし漆黒の馬の騎士が饑（き）饉（きん）をもたらし蒼（そう）白（はく）の馬の騎士が死をもたらした。殉教者が無（む）知（ち）蒙（もう）昧（まい）なる人類に復（ふく）讐（しゆう）を希求し磅（ほう）礴（はく）たる世界全土にて轟（ごう）然（ぜん）たる大地震と天災がまきおこった。神の刻印を押されたものたちが万（ばん）斛（こく）の殃（おう）禍（か）をくぐりぬけ唯一神への祈（き）禱（とう）がささげられた。つづいて七柱の終末爆撃天使トランペッターが世界中の穹（きゆう）窿（りゆう）を翺（こう）翔（しよう）し七度の嚠（りゆう）喨（りよう）たる喇（らつ）叭（ぱ）をふいた。第一の喇（らつ）叭（ぱ）によって地上の三分の一植物の三分の一が焼（しよう）燬（き）された。第二の喇（らつ）叭（ぱ）によって淼（びよう）漫（まん）たる大海原の三分の一が鮮血となり魚類の三分の一が鏖（おう）殺（さつ）された。第三の喇（らつ）叭（ぱ）により大気圏外より巨大なる隕（いん）石（せき）が墜落して巨億の人間が殪（えい）死（し）した。第四の喇（らつ）叭（ぱ）によって太陽と月（げつ）魄（ぱく）と綺（き）羅（ら）星（ぼし）の三分の一が黯（あん）黮（たん）となった。第五の喇（らつ）叭（ぱ）により巨大なる蝗（いなご）が世界中の罪深き人間たちをむさぼりくった。第六の喇（らつ）叭（ぱ）により唯一神が全能の御（み）稜（い）威（つ）で復活せしめた四大天使が人間の三分の一を殺（さつ）戮（りく）した。第七の喇（らつ）叭（ぱ）により蓴（じゆん）羹（こう）鱸（ろ）膾（かい）の大地は基（き）督（りすと）のものとなり穹（きゆう）窿（りゆう）に天の神殿＝カラビ・ヤウ多様体へのアインシュタイン―ローゼンブリッジがひらかれ契約の箱＝ゴッド・ライク・マシンたる量子コンピューターがあらわれた。『千年王国』たるメガバースのハードウェアである。さらに『天における戦い』によって魔王サタンが地上におとされ韓（から）紅（くれない）の龍（りゆう）が神の刻印をうけたものたちに婆（ば）娑（さ）羅（ら）狼（ろう）藉（ぜき）をはたらき『666の獣』メガセリオンが鮮血の海原からはいあがってきておなじく刻印をうけたものたちを殲（せん）滅（めつ）せんとし三柱の天使が『裁き』を宣言して『鎌』が大地に抛（ほう）擲（てき）された。ついに七柱の天使より『神の怒り』を横（おう）溢（いつ）させた七個の鉢をうけとった唯一神は恁（いん）麼（も）の『神の怒り』を大地にぶちまけた。第一の鉢によって『666の獣』メガセリオンが殺（さつ）戮（りく）され第二の鉢によって鮮血の海原の生物が勦（そう）滅（めつ）され第三の鉢によって世界中の真水が鮮血に豹（ひよう）変（へん）し第四の鉢によって異教徒たちが太陽の核融合によって焼（しよう）燬（き）され第五の鉢によって世界が惣（つつ）闇（やみ）に支配され第六の鉢によってメギドの丘に王が嘯（しよう）聚（しゆ）され第七の鉢によって窮極規模の大地震がおきて島（とう）嶼（しよ）も霊峰も消滅した。斯（か）様（よう）にして大淫婦バビロンの『裁き』までが終（しゆう）焉（えん）するとついに『審判』のときがきた。絢（けん）爛（らん）豪（ごう）華（か）なる神の神殿のまえに白銀の薔薇（ばら）のかたちをした玉座に鎮座する基（き）督（りすと）があらわれたのである。基（き）督（りすと）は『宣告』した。『神の愛のもとに生まれ神の愛のもとに生長したる日（ひ）出（いずる）國（くに）の民たちよ。爾（なんじ）等は最後まで神の愛にそむきつづけたるものである。ゆゑに神の肉として朕は爾（なんじ）らに『死』をあたへるものである』と。憤（ふん）懣（まん）やるかたない九（く）頭（ず）龍（りゆう）大明神は受肉した神である基（き）督（りすと）そのものに喰らいつかんとした。爾（じ）時（じ）である。基（き）督（りすと）に肉薄するごとに大明神の頭（とう）顱（ろ）たちは肥大してゆき脳髄が巨大化して破裂しはじめた。大明神の九個の頭（とう）顱（ろ）は怨（えん）嗟（さ）の絶叫をあげながら無（む）慙（ざん）なる肉塊となり三次元ディラック方程式の解の臚（ろ）列（れつ）となって消滅した。九（く）頭（ず）龍（りゆう）大明神は息絶えた。全日本国民の魂（こん）魄（ぱく）も非力に肉塊となり数式となって死んだのである。